2020.06.24
個人再生
マイホームを残して借金問題を解決。個人再生の住宅資金特別条項(住宅ローン特則)とは
借金の返済がどうにもならず、債務整理を検討されている方にとって、マイホームを残せるかどうかは大きな問題かと思います。債務整理をすると財産をすべて処分されると思っている方も多いのですが、手続きの方法によってはマイホームを残すことが可能です。
債務整理でマイホームを残す方法の1つとして挙げられるのが、個人再生の住宅資金特別条項を利用する方法です。これは住宅ローン以外の借金を大幅に圧縮することで借金問題の解決を図る方法です。
そこで、今回はこの住宅資金特別条項について解説していきます。
■まずは個人再生の仕組みを解説します
まずは個人再生の仕組みについて解説していきます。債務整理には、「任意整理」「個人再生」「自己破産」があり、借金のご状況によってどの方法を選ぶかが変わってきます。
この中の個人再生とは、裁判所に申立てを行い、債務を1/5もしくは100万円まで圧縮し、原則3年で分割返済していく方法です。これにより月々の返済額を大幅に減らすことが可能です。
どれぐらい減額されるのか、具体的な金額でご説明します。
例えば、総額500万円の借金を毎月15万円ずつ返済していたとします(利率18%)。この返済がどうにもならなくなり、個人再生の手続きを行った場合、500万円の借金は100万円に圧縮され、これを原則3年で分割返済することになります。この場合は、月々の返済額が約28,000円に減額されます。さらに、今後の利息も免除されます。
(※借金や資産のご状況によって手続き後の返済額が上がる場合があります。)
このように借金を大幅に減額することで借金問題の解決を図ります。しかし、個人再生は全ての債務が手続きの対象になります。つまり、住宅ローンにも影響が出るということです。
このまま、何もせずに手続きを進めた場合、住宅ローンも減額されますが、その代わりに住宅は銀行や保証会社によって競売にかけられ処分されてしまいます。そこでポイントになるのが「住宅資金特別条項」です。
この住宅資金特別条項を利用することで、住宅ローンの支払いを継続しながら、その他の借金を減額することで住宅を手放さずに借金問題を解決することが可能です。
■個人再生の住宅資金特別条項とは
個人再生は住宅資金特別条項があることが大きなポイントです。
本来であれば、すべての債務が手続きの対象になるのですが、この特則を利用することで住宅ローンへの影響を避けることが可能です。ただし、希望すれば誰でも利用できるわけではありません。この特則を利用するにはいくつか条件が設けられています。
【住宅資金特別条項を利用するための条件】
・個人再生の申立てをする本人名義の住宅
・本人の住居用の住宅(別荘や投資用の物件などは不可)
・減額された返済額と住宅ローンの両方の返済を継続できる見込みがある
・住宅が他の借金の担保になっていない
・代位弁済から6ヶ月以内
この住宅資金特別条項を利用する場合、住宅ローンの残高と住宅の価値の金額によっては減額される借金の金額に差が出ます。では、先程ご説明した500万円の借金(毎月15万円返済)を例にご説明していきます。
[住宅ローンの残高>住宅の時価評価額]
申立てをした時点での住宅の価値よりも、住宅ローンの残高の方が高い場合。
【例】
・借金の残高が500万円で毎月15万円ずつ返済
・住宅ローンの残高が1500万円で毎月8万円返済
・住宅の価値が1000万円
この場合は、500万円の借金が100万円に圧縮され、月々の返済額が約28,000円になります。そして、住宅ローンはそのまま毎月8万円の返済を継続していくことになります。(※借金や資産のご状況によって手続き後の返済額が上がる場合があります。)
[住宅ローンの残高<住宅の時価評価額]
申立てをした時点での住宅の価値よりも、住宅ローンの残高の方が低い場合は少し注意が必要です。
【例】
・借金の残高が500万円で毎月15万円ずつ返済
・住宅ローンの残高が800万円で毎月8万円返済
・住宅の価値が1000万円
住宅ローンの残高が800万円で、住宅の価値が1000万円の場合、差額の200万円は資産の扱いになります。そのため、返済額の計算方法が先程の例とは異なります。
これは、個人再生には「清算価値保障原則」という原則があり、最低でも所有している資産と同じ金額を返済しなくてはいけないと言うルールがあるためです。この場合、所有している資産の価格と、借金を圧縮した場合の金額を比較してどちらか高い方の金額を返済していくことになります。
この例では、500万円の借金を1/5に圧縮した金額である100万円と、資産にあたる200万円を比較して、高い方の金額である200万円を原則3年で分割返済することになります。
この場合は、月々の返済額が約56,000円になります。そして、住宅ローンはそのまま毎月8万円の返済を継続していくことになります。(※借金や資産のご状況によって手続き後の返済額が上がる場合があります。)
[住宅の時価評価額によっては個人再生のメリットが小さいケースもあります]
住宅ローンの残高よりも、住宅の価値が大きく上回っている場合は個人再生のメリットが小さくなります。
【例】
・借金の残高が500万円で毎月15万円ずつ返済
・住宅ローンの残高が500万円で毎月8万円返済
・住宅の価値が1000万円
住宅ローンの残高が500万円で住宅の価値が1000万円の場合、差額の500万円は資産の扱いになります。この場合、借金の500万円を1/5に圧縮した金額である100万円と資産にあたる500万円を比較して、高い方の500万円を返済していくことになります。
この500万円を3年分割で返済する場合、月々の返済額は約139,000円になります。そして、住宅ローンはそのまま毎月8万円の返済を継続していくことになります。(※借金や資産のご状況によって手続き後の返済額が上がる場合があります。)
返済額が多少下がることと、利息が免除される点を考えると、全くメリットが無いわけではありませんが、すでに返済が立ち行かなくなっている状態で、返済額がそれほど変わらないのであれば、個人再生での解決は現実的ではないかもしれません。
このように、清算価値保障原則の兼ね合いで、個人再生による借金の減額幅に差がでます。
■清算価値保障原則は何のためにあるの?
ご紹介したように、清算価値保障原則があることから、個人再生後の返済額が上がる場合があります。では、なぜこのようなルールがあるのでしょうか。これには、自己破産が関係しています。
自己破産をした場合は、一定の財産は処分され、債権者に配当されます。一方、個人再生の場合は基本的に財産を処分されることはありません。
しかし、財産を処分せずに借金の大幅な減額が認められたとしたらどうなるでしょう、個人再生をする人のメリットは大きいかもしれませんが、債権者としては納得いかないでしょう。「資産を持っているのに借金を返さないのはおかしい」「自己破産をして少しでも返済に充てて欲しい」となるはずです。
個人再生は、借金の返済に困窮してしまった人のための救済措置ですが、その裏側にはお金を貸したのに返してもらえなかった債権者の立場もあります。
そのため、債権者だけが大損することの無いように、清算価値保障原則というルールが設けられました。
■住宅の名義をご家族名義に変えることはしないでください
個人再生によって、住宅ローンを残したまま借金問題の解決を図ることが可能です。しかし、住宅の価値と住宅ローンの残高によっては、個人再生のメリットが少ない場合もあります。場合によっては住宅を残すことを諦めざるを得ない可能性もあります。
しかし、住宅を残したいからと言って、個人再生の手続きを行う前に、住宅ローンや住宅の名義をご家族名義に変えるということはしないでください。裁判所に財産隠しを疑われ、申立てが認められない可能性もあります。
さらに、個人再生から自己破産に方針を変更したいとなった場合も、免責が認められない可能性もあり、リスクしかありませんので、名義変更をしないようにしてください。
■借金問題の解決はアヴァンス法務事務所にご相談ください。
ご紹介したように、個人再生のしくみは複雑です。住宅資金特別条項や清算価値保障原則など聞きなれない言葉も出てきます。マイホームを残して借金問題を解決したいのであれば、まずは一度アヴァンス法務事務所にご相談ください。