2019.08.21
時効援用
借金を時効援用すると信用情報はどうなる?
借金にも時効があります。
債務整理における「消滅時効の援用」とは、一定期間、債権者からの請求がない場合に法律上の権利が消滅すると主張する手続きです。しかし、借金を放っておけば自動的に時効が成立するというわけではありません。時効を成立させるためには債権者に対して時効の意思表示をする必要があります。このことを「時効援用」と言い、時効が成立すれば借金が消滅し、返済義務がなくなります。
この記事では、時効が成立する条件について詳しく解説していきます。また、「時効援用をすると信用情報は消えるのか?」と言うご質問も、よく頂きます。ですから、消滅時効の援用が行われた後、信用情報がどのように扱われ、いつ元の状態に戻るのか、ということについても、併せて詳しく解説します。
時効援用と信用情報の関係性。事故情報は消える?消えない?
時効援用のご相談と同時に「時効援用をすると事故情報も消えるのでしょうか?」というご質問をよく頂きます。事故情報とは、いわゆるブラックリストに掲載されることですが、時効援用後の信用情報に関しては明確なお答えができません。なぜそうなるのか詳しく解説していきます。
信用情報の開示を求める際には、クレジットカード、消費者金融、ローンの情報についてはCICまたはJICCに請求し、銀行ローンの情報はJICCに請求する必要があります。また、メガバンクとの取引情報についてはKSCに開示請求を行うべきです。
債務者(お客様)、債権者、信用情報機関は下記の図のように関係しあっています。日本国内には信用情報機関が3つあり、それぞれ信用情報の取り扱いが異なっています。
[JICC(日本信用情報機構)の信用情報の扱い]
JICC(日本信用情報機構)は、日本の主要な信用情報機関の一つです。この機関は、個人の信用情報を収集・管理し、金融機関やクレジットカード会社などの加盟企業に提供しています。JICCには主に消費者金融や信販会社の借入情報が登録されています。金融機関やクレジットカード会社といった会員から提供される信用情報を管理し、情報共有を行っています。
JICCは、金融サービスの提供者が適切な信用リスクを評価し、信用取引の安全性を高めることを目的としており、そのデータベースには、クレジットカードの使用履歴、ローンの申し込みと返済状況、滞納情報などが含まれています。また、消費者自身が自分の信用情報にアクセスし、情報を確認することもできます。
通常の借入情報の場合、完済後5年を経過すればそのデータは自動的に削除されます。しかしながら、事故情報の場合は、債務整理が終了した日から5年が経過した時点で削除されることになります。
時効の成立後、金融会社がJICCに時効が成立した旨の情報を送ると、該当の信用情報自体が消え、事故情報も消えます。
[KSC(全国銀行個人信用情報センター)の信用情報の扱い]
KSC、正式には全国銀行個人信用情報センターは、日本の銀行業界を中心に個人の信用情報を管理・提供する機関です。主に銀行や信用金庫などの金融機関が加盟しており、これらの機関が提供する個人ローンやクレジットカードの利用履歴、返済状況、債務不履行の情報などを記録・共有しています。
1. 運営主体:全国銀行協会(JBA)が運営しています。
2. 加盟機関:主に銀行、信用組合、信用金庫、農協などの金融機関が加盟しています。メガバンク、地方銀行、ネット銀行なども含まれます。
3. 扱う情報:主に銀行から提供された借入情報を管理しています。
4. 情報の保管期間:最長10年間、信用情報を保管します。この情報は金融機関の審査に利用されます。
5. 情報開示の方法:インターネットまたは郵送で信用情報の開示請求が可能です。
6. 開示手続きの費用:1,000円(定額小為替証書)が必要です。
7. 情報共有:CICやJICCとCRINというネットワークを通じて情報を共有し、過剰貸付や多重債務の抑制を図っています。
信用情報の共有により、過剰な貸付を防ぎ、消費者の信用リスクを適切に管理することが可能になります。また、個人が自らの信用情報を確認したい場合にも、KSCを通じて情報の開示を受けることができ、自分の信用状態を把握し、必要に応じて改善のための対策を講じることが可能です。
KSCに登録された情報は、借金の時効を判断する際の重要な手がかりとなります。
最後の取引日や支払日が確認は、時効の起算点となる場合があります。また、KSCの記録からは、債権者による請求や債務者の債務承認の有無も確認できます。これらは時効を中断させる要因となるため、重要です。これらの情報を基に、どの債務が時効を迎えている可能性があるかを判断することができますが、時効援用が認められた場合でも、KSCの情報はすぐに削除されず、これが新規借入れの審査に影響を与える可能性がある点は注意が必要です。
[CICの信用情報の扱い]
CIC(シー・アイ・シー)は「Credit Information Center(クレジット情報センター)」の略称で、日本の主要な信用情報機関の一つです。この機関は、クレジットカード会社、消費者金融、信販会社などから提供される個人の信用情報を集約し、管理しています。主にクレジットカードの利用履歴やローンの返済状況など、個人の借入に関する情報を収集・蓄積し、これらの情報を金融機関や加盟企業に提供しています。
これにより、新たなクレジット契約の際の審査材料として利用されることで、貸し手と借り手双方のリスク管理をサポートしています。また、個人は自分自身の信用情報にアクセスすることができ、信用情報の開示請求を通じてその内容を確認することが可能です。また、内容に間違いがあれば、訂正を依頼することも可能です。
時効の成立後、金融会社がCICに対して時効が成立した旨の情報を送ると、契約が完了した旨の情報が登録されます。この時に、延滞などの事故情報があった場合は5年間残ります。
[債務が債権回収会社に譲渡されていた場合のCICの扱い]
「債務が債権回収会社に譲渡される」というのは、借金をしている人(債務者)の借金が、もともとの貸し手である金融機関から別の企業、すなわち債権回収会社に移されることを意味します。これが、一般的に「債権の譲渡」と呼ばれます。
金融機関などの貸し手は、さまざまな理由で自らが持つ債権を回収することを他の会社に委ねることがあります。たとえば、貸し手が直接回収活動を行うコストを削減したい場合や、債務不履行が発生し、専門の回収業者による方が効率的だと判断された場合などです。
債権回収会社に債権が譲渡されると、債務者はもとの貸し手ではなく、新しい債権者である債権回収会社に対して返済を行うことになります。この会社は法律の枠組み内で、債務の回収を試みる権利を持っています。
債務が債権回収会社に譲渡されると信用情報に「移管終了」と登録され、その記録が5年間残ります。債権回収会社は信用情報に関与することができないため、時効が成立したときに登録期間の5年が経過していれば「移管終了」の情報は消えており、事故情報はなくなっています。
しかし、時効が成立した時に「移管終了」の情報が残っている場合は「移管終了」の情報が残ります(債権が譲渡されてから5年間)。
このように信用情報機関が複数あり、債権が譲渡されている、いないなどの状況によって信用情報がどのように変更されるかはわかりません。金融会社がJICCとCICの両方に信用情報を登録している場合もあり、JICCの事故情報は消えたが、CICに事故情報が残っていたという可能性もあります。
「時効援用をすると事故情報も消えるのでしょうか?」という質問に対して、明確にお答えできないのはこのためです。
時効援用が成立すると、信用情報には何が記録されるのか?
時効援用が認められた場合、その事実自体は信用情報機関の記録には直接反映されません。
時効援用が認められた場合、債務者はその債務の履行を法的に拒否できますが、債務そのものが消滅するわけではありません。そのため、信用情報機関の記録には「時効援用成立」という形での直接的な記録は行われません。
ただし、時効援用後に債権者が債権回収をあきらめた場合、その債権に関する情報が信用情報機関から削除される可能性は、あります。これは債権者が自主的に行う措置であり、時効援用の直接的な結果ではありません。
信用情報機関の記録には、債務の支払い状況や延滞情報などが記録されます。時効援用が認められても、過去の延滞情報などは一定期間記録に残る可能性があります。そのため、時効援用が認められたからといって、即座に信用情報が抹消・改善されるわけではありません。
時効援用は不当な債務請求から法的に保護される手段の一つですが、その影響は複雑で、個々の状況によって異なります。金融取引や信用状況に関する具体的な影響については、専門家(弁護士や司法書士など)に相談することをおすすめします。
時効援用とは?基本的な概念を理解する
時効援用とは、一定期間経過した債務に対し、債務者が債権者の請求を拒絶できるという法律上の概念です。この期間は、債権の種類によって異なり、通常5年または10年(一般的な債権は5年、商事債権は5年、判決等で確定した債権は10年)とされています。
時効援用が認められると、債務者は法的に借金を返済する義務を免れることができます。ただし、時効は時間の流れで自動的に発生するものではなく、債務者自身が時効を援用する意思表示をする必要があります。
時効が成立した債務について、債務者が任意に返済を続けることは可能ですが、債権者が法的に返済を強制することはできません。ただし、時効成立後に債務者が債務の承認をした場合、時効を放棄したものとみなされる可能性があるため注意が必要です。
時効援用は、裁判所での訴訟や債権者との交渉の中で主張することができます。ただし、時効の援用には法的に複雑な判断が必要となるため、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
時効援用は債務者の権利を保護する重要な制度ですが、その適用には慎重な判断が必要です。
借金の時効が成立する条件
時効成立は、一定期間内に債権者が債権を行使しなければ、債務者が債務の履行を拒むことができるようになることを意味します。借金の時効は5年or10年です。しかし、この時効期間が過ぎただけでは時効は成立しません。時効援用を行うには下記の3つの条件を満たす必要があります。
・時効期間の経過
借金の時効期間は、民法により定められています。2020年4月1日以降に発生した債権については、債権者が権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年のいずれか早い方が経過すると時効が完成します。ただし、商事債権は5年、判決等で確定した債権は10年となります。
・時効の更新事由の不存在
時効期間中に債権者による請求や債務者による債務の承認などの時効の更新事由がないことが条件です。これらの事由があると時効期間が更新され、新たに時効期間が進行し始めます。
・時効の援用
時効期間が経過した後、債務者が時効の援用をする必要があります。時効の援用とは、債務者が時効の利益を受ける旨を表明することです。この意思表示がなされて初めて、時効の効果が生じます。
以上の条件が満たされることで、借金に関する時効が成立します。ただし、時効が完成しても債務そのものが消滅するわけではなく、債務者に履行を拒絶する権利が与えられるだけです。
時効に関するルールは複雑であり、個々のケースによって異なる場合があるため、具体的なアドバイスを得るためには司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
[5年以上もしくは10年以上返済をしていない]
日本の民法では、多くの場合、借金の時効期間は原則として5年または10年です。これは、債権の種類や契約の内容によって異なります。
営利目的で貸付を行っている消費者金融や銀行の時効期間は5年です。非営利目的で貸付を行っている奨学金や個人間の取引の時効期間は10年です。不動産に関連する債権など特定の条件下でも、10年となることがあります。
時効期間は最後に返済を行った日の翌日を起算日とし、一度も返済をしていないことが条件となります。
[債務の承認をしていない]
時効期間の間に債務の承認をしていないことが条件となります。債務の承認とは債権者に対して債務があることを認めることを指します。例えば、債権者に対して「返済を待ってほしい」と交渉したり、「1,000円でいいから払ってほしい」と言われて少額でも返済に応じた場合は債務の承認にあたります。もし、債務の承認をしてしまうと、時効期間が中断され振出しに戻り、時効期間が改めて計算されてしまいます。つまり、承認をしてしまうと、時効援用が困難になります。
[裁判を起こされていない]
時効期間中に支払い督促の申立てや差し押さえなどの裁判手続きを行われていないことが条件となります。裁判手続きが行われた場合は時効期間が中断され、振出しに戻ります。さらに、時効期間が10年になります。ただし、裁判所からの通知が来た場合でも、判決が確定する前であれば、時効援用を行うことは可能です。
上記の3つの条件を満たしている場合に、債権者に対して時効の意思表示を行うことで時効が成立します。時効の意思表示をしたという証拠を残すために内容証明郵便を使って時効の援用通知を送るのが一般的です。
時効が成立しない場合もある
借金に関する時効援用は、一定期間内に貸金業者など債権者が返済を請求しなければ、法的に債務が消滅する可能性があります。しかし、借金の時効は手続きを行えば必ず成立するというものではありません。時効援用に失敗するケースも存在します。時効が成立しない要因として下記のような事由があります。
1. 時効の中断
債権者が債務者に対して返済を求める法的行動を取ると、時効期間が中断されます。この行動には裁判所への訴訟提起や、支払いの督促などが含まれます。時効が中断されると、時効期間が再び始まります。
2. 時効の停止
特定の理由で時効が一時的に停止することがあります。たとえば、債務者が災害や事故で支払い不能に陥った場合、時効期間はその状態が続いている間、停止されることがあります。
3. 債務者の承認
債務者が借金の存在を認め、一部でも返済を行うと、時効期間がリセットされます。これは、債務を認めたことによって、新たに時効期間が開始されるためです。
これらの理由により、借金の時効援用は必ずしも自動的に成立するわけではありません。債務者は時効の成立を確実にするために、これらの点を考慮して対策を講じる必要があります。
[時効期間が過ぎていないのに時効援用の手続きを行った]
時効援用とは、特定の権利や義務に対する時効期間が満了した後に、その権利の放棄や義務の消滅を法的に認める手続です。この手続は、時効期間が完全に経過した後にのみ有効です。
時効期間がまだ完了していない場合、時効援用の申し立ては通常、法的な効力を持ちません。つまり、時効の主張が認められることはなく、債権者は引き続き債務の履行を求めることができます。
時効期間の起算日は最後に返済をした日の翌日から計算します。ですが、記憶が曖昧で時効期間である5年、10年が経過する前に時効援用の手続きを行ってしまった場合は時効が成立しません。
[少額の返済をしてしまった]
債務に対して少額であっても返済を行うと、時効の中断が起こります。時効の中断とは、債務者が債権者に対して債務を認める行為(例えば返済)を行うことで、それまで進行していた時効期間がリセットされ、再び時効期間が始まることを意味します。これにより、本来なら時効によって消滅可能であった債務が再び有効になり、完全に時効が成立するまでの期間が延長されます。
「1,000円でいいから払ってほしい」「利息だけでも払ってほしい」と言われて返済をしてしまうと債務の承認にあたり、時効が中断されます。
[借金があることを認めてしまった]
借金の存在を認めると、その行為が時効の中断事由となり得るため、時効期間がリセットされます。これにより、本来なら時効で消滅する可能性があった債務が再び有効となり、引き続き支払い義務が生じることになります。
債権者からの督促や催促に対して「今は払えない」「少し待ってほしい」などと言ってしまうと債務の承認にあたり、時効が中断されます。
[知らないうちに裁判を起こされていた]
裁判所からの通知は基本的に、住民票のある住所へ送られます。しかし、住民票を異動しないまま転居していたなどの理由から、裁判所からの通知を受け取れず、知らない間に裁判を起こされている場合があります。訴訟通知や裁判の書類が正確な住所に届かないなどの理由で、被告が訴訟の存在を知らないまま裁判が進行してしまうのです。
そうなると時効期間が中断し時効が成立しません。裁判所からの通知を無視した場合も同様です。
時効援用が成立しない場合はどうなる?
時効援用が成立しない場合、借金や権利の請求はそのまま有効とされ、債務者は引き続き支払い義務を負うことになります。時効援用とは、法律に定められた一定期間内に権利行使がなされなかったために、その権利を失効させることができる制度です。しかし、時効の成立には、正確な期間計算や未行使の証明が必要であり、これらが正しく行われない場合、時効援用は認められません。
時効援用が認められなかった場合、債権者は引き続き債務の返済を請求することができ、債務者は借入金やその他の負債を支払う法的義務が残ります。また、時効援用の申立てが却下されると、その後も債権者からの請求に対応する必要があるため、財産の差し押さえや給与の差し押さえなどのリスクが生じることがあります。
5年以上前の返済状況をはっきり覚えていないお客様もいらっしゃいます。そのため、時効援用を行っても時効が成立しないということもあります。時効が成立しない場合は返済義務が残りますので、返済方法を考えなくてはなりません。長期間延滞をしている場合は遅延損害金が高額になっていたり、一括請求を求められたりすることもあるため、ご自身で解決することは困難です。
そのような場合は債務整理を検討されることをおすすめします。債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産という3つの種類があり、借金を減免したり、支払いに猶予を持たせたりすることで借金問題を解決する方法です。アヴァンス法務事務所では債務整理のご相談も承っており、依頼される方の約8割が任意整理による債務整理を選択されます。また、過払い金の請求に関する事例も多いです。
債務整理に関する記事はこちら↓↓↓
まとめ
借金の時効を成立させる「時効援用」とは、一定期間内に債権者からの請求がない場合、法律に基づき借金の返済義務を免れることができる手続きです。
時効援用を成功させた場合、法的には借金が消滅しますが、これが自動的に信用情報に反映されるわけでは、ありません。通常、信用情報の回復には、最後の支払いや最後の債務発生から5年間が目安とされていますが、消滅時効の援用が記録された後、その情報が信用情報機関から削除されるまでの具体的な時間は、機関によって異なる場合があります。
信用情報機関に登録されているデータは、時効援用の成立を理由に自動的に削除されることはなく、原則として情報は一定期間(通常は最終取引から5年間)保持されます。この期間中は、借金が消滅した事実が信用情報に記載されることにより、新たなクレジット契約を結ぶ際に影響を及ぼす可能性があります。
債権者は時効を成立させないために、督促や裁判手続きを行います。債権者や裁判所から書類が届いても慌てて債権者に連絡をせず、すぐにアヴァンス法務事務所にご相談ください。当事務所は、全国から電話で無料相談が可能で、メールでも気軽にご相談いただけます。時効援用ができなくなる場合もありますので、ご自身で行動する前に必ずご相談ください!
※知らない会社からの請求にご注意ください。
知らない会社から請求が来た場合はご自身で判断せずにアヴァンス法務事務所にご相談ください。債権回収会社に債権が譲渡されるということはよくあります。また、架空請求の可能性もありますので、ご自身で判断するのは危険です。すぐに当事務所にご相談ください。