2018.11.16
自己破産
自己破産とは…デメリットとその後の生活への影響について
借金の返済が困難になった場合に、裁判所に申し立てを行い、すべての借金の返済義務を免除してもらうための手続きが「自己破産」です。自己破産は借金問題の解決に向けた最終手段ともいえます。それでは、自己破産の注意すべきポイントやデメリットを確認していきましょう。
■自己破産を検討する前に、知っておくべき重要なポイント
自己破産とは、借金が返済不能であることを裁判所に認めてもらい、すべての借金の返済義務を免除してもらう手続きです。これにより、生活再建を図ることが目的です。
それでは、自己破産で注意すべきポイントを解説していきましょう。
[すべての借金が手続きの対象]
自己破産で最初に注意しておきたいのは、手続きの対象となるのが「すべての借金」であるという点です。裁判所に対して自己破産の申し立てをする際には、金融会社などからの借金はもちろん、親族や友人・知人、会社などからの借金もすべて申告する必要があります。
「家族にバレたくないから」「あの人にはお世話になったから」などの理由で、一部の借金だけを返済するということはできません。このような行為を「偏頗弁済(へんぱべんさい)」といいます。これが裁判所に発覚すると自己破産が認められなくなる場合もあります。一部の借金を故意に申告しなかった場合も同様です。
[財産の処分と仕事への影響]
生活再建に向けて、すべての借金の返済義務が免除される自己破産ですが、裁判所の規定に従って、一定の財産を処分する必要があります。また、「資格制限」によって、申し立ての期間中は一定の職業に就けなくなります。弁護士・税理士などの士業や警備員、生命保険の募集人が該当します。ただし、資格がはく奪されるわけではありませんので、免責後に再び、同じ職業に就くことが可能です。
[免責不許可事由]
自己破産には「免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)」があり、借金の理由によっては自己破産が認められない場合があります。例えば、ギャンブルや浪費などによる借金がこれに該当します。ただし、免責不許可事由にあたる場合でも裁判所の判断により、免責が認められる可能性もありますので、一度ご相談ください。
POINT:返済義務が免除されることを「免責(めんせき)」と言います。
[保証人への影響]
身近な人などに借金の連帯保証人をお願いしている場合、連帯保証人に請求が行くことになりますので、手続きの前に事情を説明しておくことをおすすめします。連帯保証人になっている方も返済ができない場合、その方も同時に債務整理が必要になることもあります。
■自己破産ができる「2つの条件」とは?
自己破産ができる条件は、以下の2つです。
[(1)借金の金額に関わらず返済不能]
1つ目は、借金の額に関わらず、「返済不能」の状態にあることです。「これ以上、借金を返済できる見込みがない」ということを裁判所に認めてもらう必要があります。
[(2)免責不許可事由に当てはまらない]
先述したように、借金の原因がギャンブルや浪費であった場合、免責不許可事由にあたり、免責が認められない場合があります。特定の借金だけを返済する偏頗弁済を行った場合や、クレジットカードを使って購入した商品を、換金を目的に安価で売却したりした場合なども免責不許可事由に当たります。
■信用情報は?自己破産のデメリット
自己破産は生活を再建させるための手段ですが、デメリットもあります。ここでは具体的にどのようなデメリットがあるのかをご説明します。
[財産の処分]
住宅や車、保険の解約返戻金など、一定の財産を処分する必要があります。原則として、手続き開始の時点で20万円以上の価値が認められる財産が処分の対象となります。処分の対象となった財産は国によって換金され、債権者への弁済・配当に当てられます。
持ち家の場合、住まいは処分の対象となるので手放す必要があります。次に自動車の場合、ローンが残っていればローン会社に引き上げられます。ローンが残っていなくても、自動車の価値が20万円以上であれば、原則として処分対象となります。自動車の価値は必ずしも購入時の価格で決まるものではなく、あくまでも現時点での価値となりますので、査定を受けて確かめることが必要です。
[資格制限]
自己破産の申し立て中には「資格制限」があり、特定の職業・資格に影響が出る場合もあります。たとえば弁護士・税理士・公認会計士などの士業、生命保険募集員、警備員、宅地建物取引主任者などの場合です。そのほかにも該当する職業・資格はありますが、自分が該当するかどうか心配な方は専門家にご相談ください。なお、資格制限は自己破産の手続き中の期間だけで、手続きが終われば元通りに資格を活かして仕事に就くことができます。
[信用情報に登録される(俗にいうブラックリスト)]
自己破産をすると、信用情報機関に自己破産の記録が登録され、5年~10年の間は新たにクレジットカードを作ったり、ローンを組んだりすることが難しくなる可能性があります。また、信用情報は俗にブラックリストと呼ばれ、銀行や信販会社が融資を行う際に返済能力の有無を判断する材料の一つとなります。
[官報に公告される]
「官報」という国が発行する機関紙に、自己破産の事実が掲載されます。官報は法律や政令などの制定・改正、官庁からの報告、裁判の結果などが掲載されるものであり、一般の方の目に触れることはほとんどありません。
自己破産には上記のようなデメリットもありますが、「身の回りの物をすべて没収され、今後の生活が困難になる」というものでは決してありません。裁判所の規定内の生活に必要な家具や家電、99万円以下の現金といった財産は手元に残せますし、処分されるのは申立人名義の財産のみで、ご家族の財産には影響がありませんのでご安心ください。自己破産は、借金で立ち行かなくなった生活を再建させるための大切な手段なのです。
■知っておくと安心。自己破産の手続きの流れ
自己破産の手続きの流れは、アヴァンス法務事務所では以下のようになります。ご相談から手続きの終了(免責確定)まで、ご相談者さまに寄り添い、丁寧にサポートします。
破産手続きの申し立てから、免責確定までに必要となる期間は、おおむね3~4か月となります。財産をお持ちの方の場合は管財事件となり、裁判所に複数回出向く必要があります。また、場合によっては解決までに1年以上が必要になることもあります。
■手続きが終わると、生活にどんな影響がある?
自己破産の手続きが終わると、これまで抱えていた借金と、返済への不安・悩みから解放され、生活再建に向けた一歩を踏み出せることでしょう。自己破産をすることで、今後の生活にどのような影響が出るのか不安になる方もいらっしゃると思いますので、それらについてまとめてみます。
[仕事について]
資格制限に該当していた場合、免責が認められた後に資格は「復権」し、仕事を再開することができます。
[信用情報について]
信用情報機関に登録されることで、今後5年~10年の間は、新たにクレジットカードを作ったり、ローンを組んだりすることが難しくなる可能性があります。また、新たにマンションやアパートなどの賃貸契約を行う場合、信販会社系列の保証会社を利用しにくくなる可能性があります。
[ご家族への影響について]
もっとも心配なのが、ご家族への影響ではないでしょうか。まず、自己破産の場合、所有している財産を処分する必要がありますが、それは申立人名義の財産のみで、ご家族の財産には影響が及びません。また、今後ご家族がローンを組んだりする場合にも影響はありません。将来、お子さんの奨学金などの保証人になれない可能性もありますが、保証人がいらない保証機関の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
自己破産後の生活について、「戸籍に記録される」「選挙権を失う」「結婚・就職ができなくなる」といった話を耳にされたことがあるかもしれませんが、それらはすべて間違いです。
自己破産の手続きは、その他の債務整理の手続きと比べると、流れや必要書類等が複雑で、手続き完了までの時間も必要になります。しかし、自己破産はあくまでも「生活を再建させるための手段」です。わからないこと、不安なことは小さなことでもアヴァンス法務事務所にご相談ください。