自己破産後はどうなる?仕事、家族、財産、生活への影響を解説します

この記事を読まれている方は、「自己破産をすると、仕事や家族、財産、これからの生活はどうなるのか?」といったご不安をお持ちではないでしょうか?

自己破産に対して、テレビで見るような悪いイメージをお持ちの方も多いのですが、実際は、借金返済の目途が立たない方の生活を立て直す手段です。

・自己破産のメリット
自己破産の最大のメリットは、全ての借金の返済義務が免除される点です。また、各金融会社は、認定司法書士や弁護士から受任通知を受け取ると、訪問や電話・書面など一切の取り立てや督促ができなくなります。

・自己破産のデメリット
自己破産のデメリットは、信用情報機関に事故情報が登録される(俗に言うブラックリスト)ことや、家・不動産・車・バイクなどの20万円以上の価値のある財産を差し押さえられることです。

この記事では、自己破産によって、仕事や家族、財産、生活にどのような影響が出るかを解説します。

仕事はどうなる?

まずは、自己破産によって仕事にどのような影響が出るかを解説します。

会社に自己破産することを知られてしまうのか?

会社には基本的に自己破産することを知られることはありません。自己破産の手続きをしても、裁判所、債権者(借金の貸主)、破産管財人(財産の管理と処分をする人)があなたの会社に連絡や報告をすることはありません。

しかし、以下のケースでは会社に知られてしまう可能性があります

・会社からお金を借りている場合
・会社が官報をチェックしている場合

会社からお金を借りている場合は、会社自身も「債権者」になりますから、受任通知が届いた段階で自己破産することを知られてしまいます。

また、会社が官報をチェックしているかどうかは、会社の方針にもよるので一概には言えませんが、大手の警備会社や保険会社では官報をチェックしていることがあります。しかし、一般的には官報をチェックしている会社は珍しいです。

給料・ボーナスはどうなる?

上述したように、会社が自己破産の事実を知ることは基本的にありません。そのため、給料、ボーナスなどに影響が出る可能性は低いです。

そして、自己破産によって給料・ボーナスが差し押さえられることもありません

退職金はどうなる?

すでに受け取っている退職金は預貯金と同じ扱いになるため、差し押さえの対象になります。ただし、自己破産の申立て時点で預貯金が20万円未満であれば差し押さえられることはありません。

在職中の場合は、自己破産の手続き時点での退職金の見込み額を計算し、その1/8の金額が差し押さえの対象になります。ただし、この金額が20万円未満であれば差し押さえられません。

しかし、現在も会社にお勤めの場合、「受け取っていない退職金をどうやって差し押さえるのか?」という疑問が生まれます。退職金を差し押さえるために、会社を辞めるというのは現実的ではありません。むしろ経済的な更生の妨げにもなります。

そのため、一般的には差し押さえ相当額を管財人に支払い、「差し押さえを行った」形を取ります。

その支払いが難しい場合は、自由財産の拡張を裁判所に申し出ます。自由財産とは、自己破産をしても残すことができる財産のことで、「財産の合計が99万円までなら残すことが可能」と決められています。この自由財産の中に含めることができれば、退職金の差し押さえを回避することができます。

上記の理由から退職金を差し押さえられるケースは稀です。

家族はどうなる?

次に、自己破産によってご家族にどのような影響があるかを解説します。

家族への影響は?

自己破産をしても、ご家族の財産が処分される、ご家族の借入に影響する、進学・就職・結婚に影響するといった直接的なデメリットはありません

また、本人・ご家族が自己破産したことをご近所の方や学校・職場に知られることもほぼありません。

自己破産をすると官報に情報が記載されますが、官報を見てご家族が自己破産したことを周囲の方に知られる可能性は、ほぼありません。官報の存在を知っている方のほうが珍しいです。

そのため、自己破産してもご家族に直接的な影響はないと言っても過言ではありません。ただし、間接的に影響を被ることはあります。例えば、自宅を差し押さえられて、引っ越しを余儀なくされるなどです。

詳しくは別記事「自己破産をすると家族にも影響がある?考えられるデメリットをご紹介」をご覧ください。

養育費はどうなる?

養育費は自己破産の免責対象外(借金ではないため、支払い義務がなくならない)ですので、自己破産した人は支払う義務がありますし、自己破産をした人から受け取ることも可能です。

財産・お金関係はどうなる?

次に、自己破産によって財産にどのような影響があるかを解説します。

預貯金はどうなる?

預貯金も財産として扱われますので差し押さえの対象となります。

ただし、原則として20万円未満の預貯金(複数口座ある場合は合計額での計算)は差し押えの対象外で、自己破産をしても持っていることが可能です。

持ち家・車・バイクはどうなる?

持ち家・車・バイクも差し押さえの対象となります。

しかし、自己破産をする際に差し押さえられる財産は、本人名義の20万円以上の価値がある財産が対象となるため、もし車・バイクなどの価値が20万円未満の場合は、処分されることはありません

ただし、ローンが残っている場合は、ローン会社に引き上げられます。

保険はどうなる?

生命保険、学資保険やがん保険など解約返戻金が20万円以上の場合は解約されます。解約返戻金が20万円未満の場合や、掛け捨ての場合は解約する必要はありません。

スマホはどうなる?

スマートフォンに関しては、機種代の支払いが終わっていて、利用料金も延滞していなければ影響はありません。

スマホの機種代金が残っている場合

スマホの機種代も破産債権に加えられるため、残りの機種代も免除されます。機種代と利用料金が一緒に請求されている場合は強制解約になります。スマホ本体を没収されるかどうかは携帯会社の判断によります。

スマホ本体を家電量販店などで分割購入していて、利用料金の支払いは、携帯会社の場合、機種代を延滞してもスマホが強制解約になることはありません。

携帯会社が債権者にならなければ契約に影響はありません。また、この場合、スマホが引き上げられるかはローン会社の判断によります。

スマホの利用料金を延滞している場合

利用料金の延滞分も破産債権に加えられるため、延滞分は免除されますが、契約は強制解約になります。機種代の支払いが終わっていれば、スマホ本体が没収されることはありません。

自己破産をして強制解約されるとわかった場合は、事前に格安スマホに乗り換えるという方法もあります。

生活はどうなる?

最後に、自己破産によって生活にどのような影響があるかを解説します。

取り立てはどうなる?

認定司法書士や弁護士に自己破産手続きを依頼すると、依頼を受けた認定司法書士や弁護士は、債権者に対して受任通知を発送します。

受任通知を受け取った債権者は、債務者に対して直接、取立て行為を行うことは法律で禁止されているため、督促を一時的に止めることができます

信用情報機関に事故情報が載る(俗に言うブラックリスト)

自己破産の手続きを行うと、信用情報機関に事故情報(いわゆるブラックリスト)が登録されます。これにより、一定期間(約10年間)新たな借入や、ローンを組むこと、クレジットカードの作成が難しくなります。

引っ越しはできるか?部屋は借りられるか?

自己破産をすることで、引っ越しや賃貸契約ができなくなることは基本的にはありません。

しかし、信用情報の影響で家賃保証会社との契約を必須とする物件は難しいかもしれません。審査基準の緩い保証会社や、信用情報をチェックしない保証会社であれば審査に通るかもしれません。

家賃保証会社との契約を必要としない物件を選ぶなど、物件の選択肢は狭まりますが、賃貸契約ができなくなることはありません。

旅行はできるのか?

自己破産手続き中の旅行は、禁止ではありません。ただし、裁判所に浪費とみなされる可能性があるため、基本的には控えた方が良いでしょう。

海外出張も可能ですが、自己破産手続きに支障が出るため、事前に依頼先事務所に相談することをおすすめします。

また、管財事件(破産管財人が選任されている場合)では「居住の制限」があるので、国内外に限らず、長期間自宅を離れることが禁止されています。これは逃亡や財産隠しを未然に防ぐためと、裁判所からの呼び出しにすぐに応じられるようにするためです。

ただし、絶対に禁止という訳ではなく、裁判所に申請し、許可を得られれば海外出張も可能です。

年金はどうなる?

年金受給者が受け取る年金は、破産法では「差押禁止財産」となっていますので、自己破産をしても差し押さえになることがなく、満額を受け取ることができます。ただし、年金を受け取っている銀行口座自体は財産処分の対象になりますので、注意が必要です。

生活保護はどうなる?

自己破産をしても生活保護の受給は可能です。ただし、生活保護費を自己破産の費用にあてることはできません。それは、生活保護費は「最低限度の生活を維持するために使うもの」と定義されているからです。

もし、生活保護費を自己破産の手続き費用に使ってしまうと「不正受給」とみなされる可能性があります。

連帯保証人になれない?

自己破産してから数年間は、信用情報機関に事故情報が登録されている(俗に言うブラックリスト)ため、連帯保証人になることを断られる可能性が高いです。

過去に自己破産をしていても、事故情報が消えていれば、連帯保証人になれる可能性はあります。

奨学金はどうなる?

あなたが奨学金を借りていて、今もなお返済していた場合に自己破産をすると、保証人(多くの場合は親)に一括返済の請求が行きます。

また、自己破産した人は一定期間は保証人にはなれないので、例えば子どもさんの奨学金の保証人になることが難しいかもしれません。

保証人・連帯保証人への影響は?

ご家族や親戚、知人が、あなたの借金の保証人になっている場合にあなたが自己破産をすると、保証人・連帯保証人に請求が行きます。これは借金の免責が破産者本人にしか適用されないからです。

もう一度自己破産はできるのか?

制度上は前回の自己破産から7年が経過していればもう一度自己破産が可能です。ただし、管財人が付くなど1回目の自己破産よりも審査が厳しくなる傾向にあります。

まとめ

以上、自己破産手続きをすることによって「仕事や家族、財産、生活はどうなるのか?」を説明しました。

自己破産手続きは、テレビで見るような悪いイメージをお持ちの方が多いのですが、実際は、借金の返済の目途が立たない方の生活を立て直すための制度です。

自己破産の最大のメリットは借金の返済義務が免除される点にあります。そして、金融会社は、訪問や電話・書面など一切の取り立てや督促はできなくなります。

その代償としてのデメリットもありますが、まずは自己破産後に仕事、家族、財産、生活がどのようになるのかある程度理解してから、専門家に相談するのが良いでしょう。

もし現時点で不明な点があれば、アヴァンス法務事務所までお気軽にご相談ください。

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