自己破産をすると自動車はどうなる?注意すべき点は?

仕事や住んでいる地域によっては必要不可欠な自動車ですが、自己破産をした場合、現在お使いの自動車はどうなってしまうのでしょうか。自動車の問題は自己破産の手続きだけでなく、今後の生活にも影響するため、事前に正しい知識を身に付けておきましょう。

■手元に残せるかどうかは「ローン残債の有無」と「自動車の価値」で決まる

[自動車ローンが残っている場合]

自己破産の手続きに入る時点で自動車をお使いで、自動車ローンが残っている場合、原則としてローン会社または自動車販売業者に自動車を引き上げられます。

[自動車ローンなし・自動車の価値が20万円以上の場合]

一方、自動車ローンが残っていない場合、その時点で自動車に20万円以上の価値があれば、裁判所に引き上げられる可能性があります。自動車は換価され、債権者への弁済・配当に充てられます。

自動車ローンが残っていない自動車に、20万円以上の価値がある場合でも、自己破産をする方の財産が「自動車を含めて99万円以下」なら、裁判所の判断で手元に残せる可能性があります。また、レアなケースですが、通院や介護で自動車が必要と認められれば手元に残せる可能性があります。仕事で必要などの理由では、自動車を手元に残すことはできません。

[自動車ローンなし・自動車の価値が20万円以下の場合]

処分の必要はなく、これまで通りに自動車を使用できます。なお、自動車の価値については、使用していた年数や走行距離、状態などによって大きく変わります。購入時に数百万円もした自動車でも、現在の価値は20万円以下というケースも珍しくありません。自己破産の手続きの際は、自動車販売店などで査定を受け、査定書を添付書類として裁判所に提出することが必要です。

[第三者名義の自動車・ローンに保証人がいる場合]

使用している自動車が自己破産をする方の名義ではなく、ご家族などの第三者名義の自動車である場合、処分の対象になりません。また、自動車をローンで購入した際に、保証人を付けた場合はどうなるのでしょうか。自動車を換価してもローンの残債を払いきれない場合には、保証人に対して残債分の請求が行きますのでご注意ください。

■「自動車はいつまで使える?」気になる“引き上げ”のタイミング

使用中の自動車にローンが残っている場合、自動車はローン会社などに引き上げられますが、その時期・タイミングはいつ頃なのでしょうか。一般的には、弁護士や認定司法書士などがローン会社に「受任通知」を発送してから、おおむね3か月以内となります。

ローンが残っていない自動車に20万円以上の価値がある場合、ほとんどが「管財事件」となり、財産の売却や債権者集会、配当などの手続きが行われます。自動車はそれらの手続きが済んだ後、裁判所によって引き上げられます。

■絶対にしてはいけない!手続き前の「名義変更」や「一括返済」

自動車は生活するうえで欠かせない物となっている場合、何とかして手元に残したい、そのまま使い続けたいという気持ちになるのは当然のことでしょう。だからといって、自動車を手元に残すために以下のようなことをしてしまうと、自己破産そのものが認められなくなり、生活再建への道のりがいっそう険しくなるリスクがあります。

[(1)自動車の名義を変更する]

自己破産の際に処分の対象となるのは、自己破産をするご本人名義の財産です。自動車が処分されるかもしれないからといって、自動車の名義をご家族など第三者の名義に変更することは許されません。この場合は「財産隠し」と見なされ、自己破産が認められなくなるだけでなく、最悪の場合は刑事事件に発展することもあります。

[(2)自動車を不当に処分する]

ローンが残っていない自動車の場合に「どうせ処分されるのなら…」「少しでも手元に現金を残したい」などと考え、自動車を売却するようなことをしてはいけません。あるいは、手続き後も使用するために、第三者に無償で譲渡するなども許されません。なぜならば、自動車に20万円以上の価値がある場合、自動車は裁判所によって換価され、債権者への返済・配当に充てられるからです。

[(3)自動車ローンを一括返済する]

自動車をローン会社に引き上げられたくないからといって、自動車ローンだけを一括返済するといったことも認められません。そのような行為は、特定の借金だけを返済する「偏波弁済(へんぱべんさい)」に当たると見なされ、自己破産が認められない可能性があります。

[(4)自動車ローンだけを隠す]

自己破産の手続きの際には、借金をしているすべての相手(債権者)を裁判所に申告する必要があります。それは、親族や友人、会社などからの借金も同じです。「申告しなければバレないだろう…」などと考え、自動車ローンだけを申告しないということは絶対にやめましょう。自動車ローンの存在は、裁判所だけでなく、依頼する弁護士や認定司法書士に初めにきちんとお伝えください。

■手続きが終われば自動車の所有は可能。

自己破産の手続き後は、自動車を所有することはできないのか?といえば、決してそんなことはありません。手続きが終わりさえすれば、自動車の所有について裁判所などから、何らかの制限を加えられたりするようなことはありません。

手続き後にどうしても自動車が必要な場合は、現金一括で購入すれば、以前と変わらず自動車を所有できます。普段の足代わりに必要ということなら、古い軽自動車でも十分に間に合うはずです。手頃な価格の中古車を、無理のない範囲で購入するようにしましょう。

自己破産の手続きをすると、信用情報機関に自己破産をした事実が登録されますが、その登録期間は5年~10年です。したがって、自動車ローンを組むことをお考えの場合は、5年~10年が経過すれば自動車ローンが利用できる可能性はあります。ただし、ローンを組める、組めないの判断はローン会社が行いますので、その時のご収入の状況や信用情報などを総合的に見たうえで判断されます。

手続き後は、何よりもまず「生活再建」を第一にすることが大切です。自動車がないと日常生活に支障がある場合を除き、経済的にある程度のゆとりができるまでの間は、自動車の購入は控えておくほうが賢明です。

■自動車が引き上げられても、自動車保険が解約されることはない

自己破産をすると、自動車の所有・使用に大きく関わる自動車保険はどうなるのでしょうか。基本的には、自動車がローン会社などに引き上げられた場合でも、自動車保険が解約されることはありません。また、自己破産後に再び自動車を購入する場合に、自動車保険に加入できなくなるといった心配は一切ありません。

自己破産をする場合、自動車の処分などの問題でお悩みになる方は実際に多くいらっしゃいます。ご相談者さまの状況によって、自動車を残せる・残せないの判断が難しいこともありますので、気になることがあればアヴァンス法務事務所にご相談ください。

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