自己破産をすると車は残せない?車を手放したくない場合はどうすればいい?

「自己破産を考えているが、どうしても車を手放したくない…」このように、車を手放したくないがために、借金問題の解決を躊躇される方がいらっしゃいます。

普段のお仕事やお住いの地域によっては車が必要な方も多いでしょう。しかし、車を手放したくないからと言って、借金問題を放置してしまうと、さらに深刻な状況になってしまいます。もし、返済が滞ってしまうと、最悪の場合、裁判を起こされ財産を差し押さえられることもあります。そうなると、最終的に車を手放すことになりかねません。

では、車を残したまま借金問題を解決するにはどうすればいいのか、今回はその解決方法を解説していきます。

■自己破産以外の方法を検討してみる

テレビなどの影響から「借金が返せない=自己破産」だと思っている方が多いのですが、借金問題の解決方法には自己破産以外にも「任意整理」と「個人再生」があります。

車を残したまま借金問題を解決するには、どの方法がお客様にとって最適かを見極めることから始まります。例えば、返済額を減らすことで借金問題が解決できる場合など、自己破産をしなくてもいいケースが多々あります。

どの方法を選択するかで車を残せるかどうかが異なってきますのでひとつずつ解説していきます。

■任意整理:月々の返済の負担を軽減する方法

「任意整理」「個人再生」「自己破産」の中で最も車を残しやすい方法が任意整理です。全ての返済義務が免除される自己破産に対して、任意整理は月々の返済額の負担を減らすことで借金問題の解決を図ります。

この任意整理とは、今後の利息を減免してもらい、3年~5年程度で分割返済できるように金融会社と交渉を行う方法です。

例えば、総額300万円の借金を毎月10万円ずつ返済していたとします(年利18%)。これを任意整理せずに返済を続けた場合、利息だけで約101万円かかる計算になります。任意整理はこの利息の減免と分割回数について交渉を行います。

任意整理によって利息が免除され、60回分割で返済していけるように交渉が成立した場合、月々の返済額を10万円から5万円に減額することが可能です。(※延滞の有無など、取引内容によって和解条件が変わるケースがあります。)

この減額された金額で毎月の返済を続けられる見込みがあれば、任意整理を行うことが可能です。さらに、任意整理の場合は基本的に財産を処分されることはありませんので、車のローンが残っていなければ、任意整理をしても車を処分されることはありません。

また、車のローンが残っている場合は、車のローンを任意整理の対象から外すことで車を残すことが可能です。ただし、車のローンはそのまま払い続けることになりますので、返済の継続が可能かどうかを慎重に検討する必要があります。

このように、任意整理は手続きを行う債務と行わない債務を選ぶことができます。そのため、車のローン以外にも、住宅ローンやバイクのローンを手続きの対象から外すことで、財産を手放さずに借金問題の解決を図ることが可能です。

さらに、任意整理は裁判所を通さないため、個人再生や自己破産にくらべて手続きが簡易的です。認定司法書士や弁護士が間に入って直接、金融会社と交渉を行いますので、お客様にやって頂く作業もほとんどなく、ご家族や職場に内緒で手続きを進めることが可能です。

■個人再生:借金の金額を大幅に圧縮する方法

任意整理は今後の利息を減免してもらうことで返済額を減らします。しかし、借金の元金自体は減りません。任意整理の減額幅では返済を継続することが難しい場合は、個人再生を検討していきます。

では、個人再生は車を残すことができるのでしょうか?個人再生の仕組みと併せて解説していきます。

個人再生とは、裁判所に申立てを行い、元金を概ね1/5もしくは100万円まで圧縮し、原則3年で分割返済をしていく方法です。さらに、その後の利息も免除されます。

先程の例に出てきた、総額300万円の借金を毎月10万円ずつ返済していた場合(年利18%)に、個人再生の手続きを行ったとします。元金が100万円まで圧縮され、それを3年間で返済していくことになった場合、月々の返済額を10万円から約28,000円まで減らせます。

個人再生の場合は任意整理のように、影響を出したくない債務を手続きの対象から外すということができません。すべての債務が手続きの対象となります。そのため、個人再生で車を残せるかどうかは車のローンの有無によって変わってきます。

[車のローンが無い場合]

車のローンが無い場合は、車を処分されることはありません。ただし、車の価値が高い場合は、個人再生後の返済額が上がる可能性があります。(裁判所に申立てをした時点での車の価値)

これは、個人再生には【清算価値保障原則】というルールがあるためです。財産を処分しない代わりに最低でも財産の価値と同じ金額を債権者に支払わなければならない、という原則です。なぜ、このような決まりがあるかというと、これには自己破産が関係しています。

自己破産の場合は価値のある財産は処分され、債権者に配当されます。ですが、個人再生で財産を処分せずに借金の大幅な減額が認められたとしたら、債権者としては納得できないでしょう。「自己破産をして少しでも多く返済に充てて欲しい」と考えるでしょう。そのため、このような原則が設けられました。

例えば、総額500万円の借金があり、200万円の価値がある車を所有していたとします。この場合、圧縮された債務額と財産の価値を比較して、どちらか高いほうの金額を返済していくことになります。この例の場合は、個人再生後の返済額は200万円になります。

[車のローンが残っている場合]

車のローンが残っている場合は、車の所有権が誰にあるかによって変わります。一般的に車をローンで購入した場合は、ローンを払い終わるまで車の所有権はローン会社や信販会社にあります。これは所有権留保と言われる特約で、ローンを完済した時点で所有権が購入者に移行されます。

つまり、車のローンを完済するまでは車が担保になっているということです。このような場合に個人再生をすると車はローンの担保として処分されてしまいますので、車を手元に残すことが難しくなります。

銀行のフリーローンやクレジットカードのカードローンの場合は「所有権留保」がついていないケースが多く、その場合は購入者に所有権がありますので、車を手元に残せる可能性があります。ただし、その場合は先ほどご説明した清算価値保障原則により、返済額が上がる可能性があります。

■自己破産:すべての返済義務を免除してもらう方法

任意整理でも、個人再生でも借金問題の解決が見込めない場合は自己破産を検討することになります。

テレビなどの影響から「自己破産をすると、すべての財産を没収されて生活ができなくなる。」といった間違ったイメージをお持ちの方が多いのでまずは、自己破産の仕組みについて解説します。

自己破産とは裁判所に申立てを行い、全ての債務の返済義務を免除してもらう手続きです。一定の財産を処分する必要がありますが、裁判所の規定内の生活に必要な家具・家電や20万円以下の価値の財産を残すことが可能です。

自己破産は、個人再生と同様にすべての債務が手続きの対象になります。そのため、車のローンが残っていたり、20万円以上の価値がある場合は車を残すことが難しくなります。逆に考えると、申し立ての時点で車の価値が20万円以下で、ローンが残っていなければ車を残すことが可能です。

■自己判断は危険です

ご紹介したように債務整理のどの手続きを行うかによって、車を手元に残せる、残せないが変わってきます。ただし、ここでご注意いただきたいのが、車を残す方法をご自身で判断しないで頂きたいということです。

[処分されるのは本人名義の車のみ]

債務整理で車に影響が出るのは、あくまでご本人名義の車だけです。例えば、ご家族名義の車を乗っている場合などは車を引き上げられることはありませんのでご安心下さい。

[車を残すことのみを優先させる]

例えば、「車を残したいから任意整理をしたい。」と考えていても任意整理後の金額で返済を続けられなければ意味がありません。返済を続けられる見込みが無いのに、無理をして任意整理の手続きを行っても、返済ができなければ借金問題が振出しに戻ってしまい、結局、車を手放すことになりかねません。

また、車を残したいがために、カーローンがあることをご申告いただけないことがごく稀にあります。しかし、これは危険です。例えば、クレジットカードとカーローンを同じ銀行で契約していて、クレジットカードを任意整理の対象に含めると、カーローンにも影響が出てきます。

このように、思わぬ影響が出ることもありますので、当事務所ではすべての債務をご申告いただくようにお願いしております。ご相談時に、車を残したい旨をお伝え頂けましたら、最適な解決方法をご提案いたします。

[車の名義を変更する]

処分される車はあくまでご本人名義のものです。だからと言って、ご自身の判断で車の名義をご家族名義に変えるということはしないでください。個人再生や自己破産の申立ての前に名義変更を行うと、財産隠しを疑われ最悪の場合、個人再生や自己破産が認められない可能性があります。

また、車のローンが残っていて、所有者がローン会社や信販会社になっている場合はそもそも名義変更ができません。

[残っているローンを一括で返済する]

車を残したいからと言って、残っている車のローンをご自身で一括返済をするのは待ってください。

自己破産や個人再生を行う場合、原則として金額や借入内容にかかわらず、どの債権者も平等に扱わなくてはいけません。返済不能の状態にあるのに、特定の債権者にだけ返済することを偏頗弁済(へんぱべんさい)と言います。

個人再生の場合は、返済に充てた金額は本来であれば存在したはずの資産とみなされるため、個人再生後の返済額が上がってしまう可能性があります。また、自己破産の場合は申立て自体が認められない可能性もあります。

このように、車を残したいからと言ってご自身の判断で動いてしまうと、余計に状況が悪くなってしまうこともあります。どのような解決方法が最適なのか、必ず認定司法書士や弁護士にご相談ください。

■車を残したい場合は早めの対応が重要です。

車を残したまま借金問題を解決したい場合は、早めの対応が重要になります。

債務整理のご相談は早ければ早いほど、解決方法の選択肢が広がります。逆に、借金問題がどうにもならない所まで深刻化してしまい、「自己破産しか選べない」という状況になってしまうと、車を残せる可能性が低くなってしまいます。

もし、少しでも借金の返済が苦しいと感じているのであれば、すぐにアヴァンス法務事務所にご相談ください。 

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