2020.06.10
任意整理
任意整理をしても月々の返済額が減らない?それでも手続きをしたほうがいい理由
借金問題の解決方法に【任意整理】という方法があります。
任意整理は月々の返済額を減らすことで借金問題の解決を図ります。しかし、お客様のご状況によっては月々の返済額が減らない場合や、逆に返済額が増えてしまう場合があります。
そのため、「任意整理をするメリットがないのでは?」と、手続きをするかどうか迷われるお客様が多いです。そこで今回は、任意整理をしても月々の返済額が減らない理由と、本当にメリットが無いのかを解説していきます。場合によっては、任意整理以外の方法を検討する必要もありますので、そちらも併せて解説していきます。
■なぜ?任意整理をしても月々の返済額が減らない!
まずは、任意整理がどのような仕組みかを解説していきます。
任意整理とは、金融会社と【将来利息の減免】と【分割返済】について交渉を行い、月々の返済の負担を軽減する方法です。具体的な金額を例に説明していきましょう。
例えば、5社の金融会社から合計300万円を借りていたとします(利率18%)。これを毎月10万円ずつ返済したとすると、完済するまで約101万円の利息を払うことになります。任意整理はこの約101万円の利息を減免してもらえるように金融会社と交渉を行います。
仮に、利息の免除と60回分割の交渉が成立した場合、月々の返済額を10万円から5万円まで減らすことが可能です。(※延滞の有無など、取引内容によって和解条件が変わるケースがあります。)
このように、元金のみを分割で返済していけるように交渉することで、月々の返済額を減らすことが可能です。しかし、全てのお客様がこの例のようになるわけではありません。稀に、返済額が減らないケースもありますので解説していきます。
[月々の返済額がそれほど減らないケース]
実際にご相談いただいたお客様のケースをご紹介します。
このお客様は、金融会社5社から合計300万円を借りて、毎月66,000円を返済されていました(利率16%)。ご相談の段階で任意整理後の返済額がいくらになるのか、おおよその計算をしたところ、月々の返済額が64,000円程度になる見通しでした。
このように、月々の返済額がそれほど減らないケースもあります。そして、その原因はこのような場合です。
・元々の返済額が少ない
・金融会社ごとに分割回数の条件が異なる(概ね36回~60回程度)
・延滞を出していた
・取引期間が短い
このお客様も、これらの要因に当てはまっていました。
元々の返済額が少なかったことと、5社から借入をされており、60回分割に応じてもらえる金融会社もあれば、36回分割しか認めない金融会社もありました。さらに、延滞を出していたため、和解条件が厳しくなることが想定されました。
それらを踏まえて計算した結果、任意整理をしても月々の返済額がそれほど減らない見通しでした。では、月々の返済額が減らない場合は、任意整理を行うメリットはないのでしょうか。
仮に、このままの返済を続けた場合を考えてみましょう。
このまま毎月66,000円を返済し続けると、利息だけで約164万円を払う計算になります。元金を合わせると約464万円を返済する必要があります。しかし、すでに延滞している状態でこのまま返済を続けていくことが現実的に可能でしょうか。
恐らく、難しいのではないでしょうか。このままの返済を続けるよりも、任意整理を行って元金の300万円を3年から5年程度で完済されるほうが現実的ではないでしょうか。
月々の返済額はそれほど減りませんが、崩れた返済計画を立て直し、完済を目指すことができます。
[月々の返済額が増えるケース]
任意整理をすることで、逆に月々の返済額が増える場合もあります。実際のお客様のケースでご説明します。
このお客様は、金融会社2社から合計150万円を借りて、毎月23,000円を返済されていました(利率16%)。ご相談の段階で任意整理後の返済額がいくらになるのか、おおよその計算をしたところ、月々の返済額が27,000円程度になる見通しでした。
このように、返済額が増えてしまう場合があります。
このお客様の場合は、返済額と利息のバランスが大きく崩れていることが原因でした。毎月23,000円を返済していても、その内の約20,000円が利息の支払いに充てられており、ほとんど元金が減っていないご状況でした。このように、借入金額に対して返済額が少なすぎる場合は、任意整理を行っても月々の返済額を減らせない場合があります。
では、この場合は任意整理を行うメリットがないのか考えてみましょう。
もしも、任意整理をせずに、このまま返済を続けた場合、利息だけで約204万円を払う計算になます。さらに完済するまで10年以上かかる計算です。
すでに返済が苦しくなっている状態で、このまま10年以上返済を続けるのは難しいのではないでしょうか。任意整理であれば返済期間は概ね3年から5年程度ですし、元金のみを返済していくので着実に借金の金額を減らしていくことが可能です。
任意整理をせずにこのまま354万円を返済するよりも、任意整理を行って、元金の150万円を分割返済していく方が現実的ではないでしょうか。
■「まだ払えているから大丈夫」と思っていると危険です。
ご紹介した2つのケースのように、任意整理を行っても月々の返済額が減らない場合があります。
そのため、手続きを迷われた結果、「まだ払えているから大丈夫だろう」と、借金問題の解決を先延ばしにしてしまう方がいらっしゃいます。しかし、これは余計に借金が増えてしまう危険な行為です。
実際に、任意整理の手続きを保留にされたお客様が、数か月後に「やっぱり返済できないから手続きをしたい」と再度ご相談いただくケースが少なくありません。そして、最初にご相談いただいた時よりも借金の総額が増えている方が多いです。
なぜ、借金が増えてしまうのか、その原因の多くは【利息】と【借金の繰り返し】にあります。どういうことか、具体的な数字を例にご説明していきましょう。
例えば、A社から70万円をキャッシングで借りて、毎月2万円を返済するとします(利率18%)。では、この借金の返済が苦しくなって、別のB社から借りて返済すると、借金の総額がどのようになるのか見てみましょう。
【1ヶ月目】
A社への2万円の返済が苦しいので、B社から2万円借りて返済に充てたとします。しかし、返済額の内、約半分は利息の返済に充てられるため、A社の借金は残り69万円になります。これで、A社とB社の借金の合計は71万円になりました。翌月も見てみましょう。
【2ヶ月目】
今月もA社の返済が苦しいので、またB社から2万円を借りて返済したとします。しかし、返済額の内、約半分は利息の返済に充てられるため、A社の借金は残り68万円になります。これで、A社とB社の借金の合計は72万円になりました。さらに今月からはB社への返済が加わってきます。
徐々に借金の総額が増えていることがお分かりいただけたでしょうか?このような「借りて、返して」を繰り返してしまうと、いずれはB社の返済も苦しくなってきます。そして、C社、D社と借入を増やしてしまい、借金の総額がどんどん増えてしまいます。
このような状況でも「まだ払えているから大丈夫」と言えるでしょうか?借金が増え過ぎると、いずれは借入がストップしてしまい、全ての返済が行き詰ってしまいます。
このような借入を繰り返し、借金の総額が増え過ぎてしまうと借金問題の解決が難しくなってしまいます。「返済が滞っているか、いないか」ではなく、「借金が減っているか、いないか」で考えてみてください。
■借金の金額が増え過ぎるとどうなるのか?
借金の総額が増え過ぎると、なぜ解決が難しくなるのか解説していきましょう。
例えば、借金が300万円の時点で任意整理をした場合と、借金が500万円になってから任意整理をした場合に、月々の返済額にどれぐらいの差があるのか比べてみましょう。
【借金の総額が300万円】
仮に、利息の免除と60回分割で和解交渉が成立した場合、月々の返済額は5万円になります。
【借金の総額が500万円】
仮に、利息の免除と60回分割で和解交渉が成立した場合、月々の返済額は約84,000円になります。
(※計算結果は概算です。すべてのお客様に当てはまるわけではありません。)
このように、借金の総額が大きくなると、月々の返済額も大きくなります。毎月5万円を返済していくのと、84,000円を返済していくのとでは負担の重さが違います。
また、任意整理後の金額で返済を継続できる見込みが無ければ、任意整理の手続きはできません。借金の金額が大きくなり過ぎて、任意整理での解決が難しくなった場合は、「個人再生」や「自己破産」と言った、裁判所を通す手続きを検討する必要があります。
[個人再生と自己破産はどんな手続き?]
借金問題の解決方法には、任意整理以外にも「個人再生」と「自己破産」があります。
個人再生は、債務を概ね1/5もしくは100万円まで圧縮し、原則3年で分割返済をしていく方法です。すべての債務が手続きの対象になりますが、住宅ローン特別条項を利用することで、住宅ローンをそのまま残すことが可能です。
また、自己破産は、全ての債務の返済義務を免除してもらう方法です。一定の財産を処分することになりますが、家具や家電といった生活に必要な財産は残すことが可能です。(裁判所の規定あり)
このように、任意整理よりも個人再生・自己破産の方が借金の減額幅が大きいです。では、任意整理との違いを見ていきましょう。
まず、任意整理は手続きが比較的簡易です。裁判所を通さないため提出書類が少なく、お客様にやって頂く作業も特にありません。そのため、ご家族に内緒で手続きを進めることが可能です。また、カーローンや住宅ローンなど影響を出したくない債務を手続きの対象から外すことが可能です。
それに対し、裁判所に申立てを行う個人再生と自己破産は提出する書類が多く、手続きがやや複雑です。家計の収支表や住宅や財産に関わる書類も提出する必要があるため、ご家族に内緒で手続きを進めることが難しいです。また、車や住宅などの財産を手放す可能性も出てきます。
そのため、柔軟な対応が可能な任意整理を希望されるお客様が多いです。しかし、借金の総額が大きくなり過ぎると、任意整理を選択することが難しくなります。
任意整理は月々の返済額を減らすだけでなく、崩れてしまった返済バランスを立て直し、完済に向けて着実に元金を減らしていけることもメリットになります。借金の返済が苦しくなっているのであれば、一度、アヴァンス法務事務所にご相談ください。