夫婦そろって任意整理はできるのか

生活費が足りないなどのご事情から、ご夫婦それぞれが借金を抱え、返済に追われているというケースがあります。そして、ご夫婦ともに任意整理を検討される方もいらっしゃいます。

そこで気になるのが、「夫婦そろって任意整理はできるのか？」という疑問です。このコラムではご夫婦の借金問題の解決方法について解説します。

夫婦同時に任意整理をすることは可能

答えとして、夫婦同時に任意整理の手続きを進めることは可能です。

むしろ、ご夫婦ともに返済が苦しいのであれば、お2人とも任意整理を行った方が、家計全体の改善につながるため、より借金問題を着実に早く解決できます。

では、ご夫婦で任意整理を行う場合のポイントを見ていきましょう。

ご夫婦それぞれが任意整理の条件を満たしていれば問題ない

「ご夫婦が同時に任意整理をするための条件」と言うものはありません。

ご夫婦が同時に任意整理をされる場合でも、ご夫婦で1つの手続きを進めるのではありません。夫の手続き、妻の手続きとして、それぞれ別に進めていきます。

そのため、ご夫婦それぞれが「任意整理後の返済額で、返済を継続できる見込みがある」という条件を満たしていれば、任意整理の手続きを進めることが可能です。

任意整理は、認定司法書士や弁護士に依頼して進めるのが一般的です。ご夫婦で同じ事務所に依頼しても、別々の事務所に依頼しても特に問題はありませんが、連絡が取りやすいことから、同じ事務所に依頼されたほうが手続きは進めやすいでしょう。

注意点はご夫婦どちらも事故情報（俗に言うブラックリスト）が登録されること

任意整理をすると信用情報機関に事故情報が登録されます。俗に、「ブラックリストに載る」と言われる状態になります。

事故情報が登録されると、新しいクレジットカードを作ったり、ローンなどの借入が難しくなります。また、任意整理をしたクレジットカードも強制解約になるため、使えなくなります。

ご夫婦2人ともクレジットカードが使えなくなる可能性が高いため、多少の生活上の不便が出ることは念頭に置いて検討してください。

※クレジットカードの代わりの決済方法としてデビットカードがあります。後払いやリボ払いはできませんが、クレジットカードと同様の使い方ができます。

夫婦のどちらかだけ任意整理をした場合の注意点

ここまでで、ご夫婦が同時に任意整理をしても特段の問題はないことを解説しました。では逆に、ご夫婦のどちらかだけ任意整理をした場合の注意点を解説します。

任意整理をするとクレジットカードや今後の借入に影響が出るため、手続きを躊躇されるお客様も多いです。その結果、「ご夫婦のどちらかだけ任意整理をする」という方法を取られる方もいらっしゃいます。

この場合、結果的にどちらの借金問題も解決に至らないケースが散見されます。

例えば、妻だけが任意整理をしたとします。

妻は返済の負担が軽減されましたが、夫の借金問題はそのままです。夫の借金の返済に家計が圧迫されてしまい、結果的に夫だけでなく、妻の返済も難しくなってしまうケースがあります。

また、任意整理をしたことでクレジットカードが使えなくなった妻が、夫のクレジットカードを使ってしまい、夫の借金が増えてしまう。このようなケースもあります。

ご夫婦のどちらかが任意整理を行っても、家計全体の改善につながらなければ、再び返済が滞ってしまい、双方の借金問題が振出しに戻ってしまいます。2人とも借金の返済が苦しいなら、2人とも任意整理をしたほうが良いでしょう。

どちらかの借金問題だけを解決できても、もう一方の借金問題が残っていては、根本的な解決になりません。

夫婦別々の方法を選択することもできる

「夫婦そろって任意整理はできる」という解説をしましたが、それぞれ別々の方法で借金問題の解決を図ることもできます。

債務整理には、任意整理・個人再生・自己破産があります。夫が任意整理だから、妻も任意整理をしなくてはいけない、と言う訳ではありません。債務整理はあくまで、個々の手続きですので、それぞれの借金の状況によって別の方針を選択できます。

借金が多すぎる場合など、任意整理では解決できないこともあります。その場合は、より借金の減額幅が大きい、個人再生や自己破産を検討します。

例えば、借金の金額が少ない奥様は任意整理、借金の金額が多いご主人は自己破産を選択する。

他にも、財産をお持ちでない奥様は自己破産、住宅ローンをお持ちのご主人は個人再生を選択するなど、ご夫婦であっても、それぞれのご状況によって、別々の方針を取ることが可能です。

個人再生と自己破産の説明は以下をご覧ください。

個人再生
裁判所に申し立てを行い、住宅ローンを残して債務を大幅に減額できる方法です。

自己破産
裁判所に申し立てを行い、すべての返済義務を免除してもらう方法です。

解決を先延ばしにすると、余計に深刻な状況になる

ここまでで、ご夫婦同時の任意整理について解説しました。

ご夫婦共に借金の返済が苦しくなっているなら、同時に任意整理をすることは可能です。むしろ、家計全体の借金問題を解決するには、お二人とも手続きをされたほうが良いでしょう。

しかし、クレジットカードや今後の借入への影響を懸念して、とりあえずどちらかだけ手続きをされる方もいらっしゃいます。この場合、家計全体の改善にはならず、借金問題の根本的な解決が遠ざかってしまいます。

問題を先延ばしにすると、解決が余計に難しくなります。できる限り早めに任意整理を検討することが得策です。

アヴァンス法務事務所では、これまで多くの方の借金問題を解決してきました。ご夫婦で任意整理をお考えの方も、お気軽にご相談ください。ご自身にあった方法をご提案いたします。