任意整理(債務整理)は自分でもできる?個人で行う方法を解説

借金の返済が苦しくなったとき、「任意整理って自分でもできるのかな?」と思われるかもしれません。専門家に頼むとお金がかかるため、できるなら自分で何とかしたいと考えるのは自然なことです。

しかし、結論から言うと、任意整理を自分一人で行うのはおすすめできません。たしかに費用は節約できますが、それ以上にリスクや手間、精神的な負担が大きいからです。

この記事では、任意整理は自分でもできるのかどうか、その場合の方法やメリット・デメリット、判断基準について解説します。ぜひ参考にしてください。

任意整理を自分で行うことは可能?知識の基本と現実的な判断

借金の返済に悩んでいる方は、任意整理を自分一人でも手続きができるのでしょうか?まずは、任意整理の基本について押さえておきましょう。

任意整理とは?自分一人でも手続きができる?

任意整理とは、お金を貸している会社(債権者)と直接話し合い、利息のカットや返済条件の変更を行う手続きです。裁判所を通さない私的な交渉なので、法律上はご本人が自分で行うこともできます。

具体的には、借金をしている消費者金融やクレジットカード会社に対し、「今の条件では返済が難しいので、利息をなくして元本だけを分割で返済させてほしい」という交渉をします。もし成功すれば、将来発生する利息がカットされ、3年から5年程度の分割払いで完済できるよう、返済計画を再編成します。

ただし、現実には多くの壁に直面するはずです。債権者は交渉のプロであり、個人からの申し出に対しては慎重に対応することが一般的です。「本当に返済能力があるのか」「法的知識は十分か」といった点を厳しく判断されるため、思うような結果が得られないケースも少なくありません。

また、複数の会社から借り入れがある場合は、それぞれと個別に交渉しなければならず、かなりの時間と労力を必要とします。書面のやり取りや電話での交渉、返済計画の作成など、普段の生活を送りながらこれらをすべて一人でこなすのは、想像以上に大きな負担があります。

自分で任意整理を行う場合の手順と必要書類

任意整理を個人で進める場合、基本的な流れは専門家に依頼する場合と大きな違いはありません。ただし、すべての作業を自分で行う必要があり、法的な知識や交渉スキルが求められます。ここでは、実際の手順を段階的に見ていきましょう。

ステップ1:借金の総額を把握して必要な書類を集める

任意整理の第一歩は、現在の借金状況を正確に把握することです。特に、複数の金融機関から借入がある場合、これは想像以上に複雑な作業となります。

まず、すべての債権者(お金を貸している会社)をリストアップし、それぞれの借入残高、金利、毎月の返済額を整理しましょう。消費者金融、クレジットカード会社、銀行など、借入先が複数ある場合は特に注意深く調べることが重要です。

必要な書類は、各社からの契約書、借入明細書、直近の支払い明細書等です。これらの書類が手元にない場合は、各債権者に連絡して取引履歴の開示を求めてください。取引履歴には過去の借入と返済の詳細が記載されており、過払い金の有無を確認するためにも大切な資料になります。

また、ご自身の収入状況を証明する書類も準備しておきましょう。給与明細書や源泉徴収票、自営業の方は確定申告書などが該当します。これらは債権者との交渉で、返済能力を示すために使用するものです。

さらに、家計収支表を作成し、毎月どの程度の返済が可能かを具体的に算出しておくことも大切です。債権者は感情的な訴えではなく、数字に基づいた現実的な計画を求めています。

ステップ2:債権者に連絡して交渉を始める

書類の準備が整ったら、各債権者に連絡を取り、任意整理の交渉を開始します。ここが、個人で任意整理を行う際の最大の難関となります。

まず、債権者の担当部署を特定する必要があります。通常の顧客対応窓口ではなく、債務整理を担当する専門部署に連絡しなければなりません。多くの場合、「お客様相談室」や「債権管理部」などの部署が対応しています。

電話で連絡する際は、任意整理を希望していることを明確に伝え、担当者との面談日時を設定します。この時点で、相手が冷淡な態度を取ったり、「弁護士を通してください」と求められたりすることも珍しくありません。個人からの任意整理の申し出に対して、債権者側が慎重な姿勢を取るのは一般的なことです。

交渉においては、現在の収入状況や家計の状況、返済が困難になった理由を説明し、具体的な返済計画を提示します。たとえば、「現在、月5万円の返済が困難なため、月3万円の分割払いを36回でお願いしたい」といった具体的な数字の提案が求められます。

ただし、債権者側も交渉のプロであり、個人に対して厳しい条件を提示してくることが少なくありません。利息のカットを求めても応じてもらえない場合や、返済期間の延長に制限を設けられることもあります。さらに、複数の債権者がいる場合、すべての債権者と同程度の条件で合意を得るのは非常に難しいのが現実です。

ステップ3:和解成立後は返済を管理する

幸い債権者との交渉がまとまり、和解契約が成立したとしても、その後も返済を続ける必要があるため、返済管理は継続的な課題といえます。

和解契約書には、返済金額、支払日、支払方法などが詳細に記載されます。この内容を正確に理解し、約束通りに返済を続けることが必要です。通常、任意整理後の返済は3年から5年程度の長期にわたるため、途中で収入が減少したり、予期せぬ出費が生じる可能性も考慮しておきましょう。

複数の債権者と和解した場合、それぞれ異なる支払日や金額を管理しなければなりません。例えば、A社には毎月10日に2万円、B社には25日に3万円、C社には月末に1万円といった具合に、複雑な支払スケジュールになることも少なくありません。

もし返済が遅れそうになった場合は、事前に債権者に連絡を入れましょう。和解後に約束を破ると、一括返済を求められる可能性があり、そうなると再び深刻な状況に陥ってしまいます。

また、任意整理を行うと信用情報機関に事故情報が登録されるため、新たなローンやクレジットカードの利用が制限されます。この期間中は現金での生活を基本とし、家計の管理を徹底し、生活を立て直すことも大切です。

個人で任意整理を進める場合、法的知識の不足や交渉力の限界から、思うような結果が得られない可能性が高いのが現実です。債権者との交渉が決裂したり、不利な条件での和解を余儀なくされたりすることも少なくありません。

自分で任意整理を行う2つのメリット

任意整理を自分で行うことの主なメリットは、主に費用の面と、自分のペースで進められるというプライバシーの側面の2つです。「任意整理をしたいけれど、専門家に頼むと費用が高そう…」そんな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。実際に、自分で任意整理を行うことで得られるメリットについて解説します。

1.弁護士・司法書士費用(20~50万円)を節約できる

任意整理を専門家に依頼する場合、弁護士であれば1社あたり3〜5万円程度、司法書士の場合は2〜4万円程度の報酬が一般的です。複数の債権者がある場合、総額で20万円から50万円程度の費用がかかることも珍しくありません。

自分で手続きを行えば、これらの専門家報酬を丸々節約することができます。郵送代や書類作成にかかる実費程度で済むため、経済的負担は大幅に軽減することができます。

特に、借金額がそれほど多くない場合や、債権者が1〜2社程度の比較的シンプルなケースでは、専門家の報酬を節約する効果は大きくなります。月々の返済に加えて専門家費用を工面するのが困難な状況では、この費用の節約は重要な意味を持ちます。

ただし、節約できる費用と、手続きにかかる時間や精神的負担、そして交渉が成功する可能性を総合的に判断することが大切です。債権者との交渉で有利な条件を引き出せなければ、結果的に支払総額が増える可能性もあることを理解しておきましょう。

2.自分のペースで進められてプライバシーを確保できる

任意整理を自分で行う場合、すべての手続きをご自身のタイミングで進めることができます。専門家との打ち合わせ日程を調整する必要がなく、仕事や家庭の都合に合わせて債権者との連絡や書類作成を行えるのは大きなメリットです。

また、借金問題は非常にプライベートな事柄であり、できるだけ多くの人に知られたくないと感じる方も多いはずです。家族や職場の同僚にさえ相談できずに一人で悩んでいるケースも少なくありません。

自分で手続きを進めることで、専門家の事務所に通う必要がなくなり、「弁護士事務所から電話がかかってきた」「司法書士事務所からの郵便物が届いた」といった形で周囲に借金問題が発覚するリスクも避けられます。

特に、職場や家族に内緒で解決したいと考えている方にとって、このプライバシーの確保は重要です。債権者との連絡もご自身の携帯電話で直接行えるため、連絡時間や方法についても自分でコントロールが可能で、周囲に気づかれる心配が少なくなります。

ただし、手続きが複雑になったり、債権者との交渉が難航したりした場合には、専門家のサポートを受けることで、より良い条件での解決の可能性があることも頭に入れておきましょう。状況に応じて適切な選択肢を検討することで、あなたに最も合った方法を見つけることができます。

自分で任意整理を行う4つのデメリットとリスク

任意整理は法的な手続きではないため、理論上は債務者本人が直接債権者と交渉することも可能です。しかし、専門知識と交渉スキルが求められる領域であり、個人が行う場合にはデメリットが生じる可能性があります。ここでは、自分で任意整理を進める際に直面する具体的なリスクについて、詳しく解説していきます。

1.債権者からの取り立てや督促が止まらない

弁護士や司法書士に任意整理を依頼した場合、「受任通知」という専門家からの連絡が各債権者に送られます。この通知が届いた瞬間から、法律上、債権者は債務者本人への直接的な取り立てや督促ができなくなります。これは貸金業法第21条に基づく効果で、専門家が介入した案件では、直接の取り立て行為は違法となります。

しかし、ご本人が直接交渉を行う場合、このような法的保護は適用されません。むしろ、交渉期間中も通常通り督促が続き、場合によっては「支払い意思が曖昧だ」と判断されて取り立てが強化される可能性もあります。

電話での督促、書面での催告、自宅への訪問など、精神的なプレッシャーを受け続けながら複雑な交渉を進めるのは困難です。冷静な判断力を保てなくなり、焦って不利な条件を受け入れてしまうリスクも高くなります。

さらに、交渉が長期化すれば、その間も遅延損害金が発生し続けるため、最終的な返済総額が膨らんでしまう可能性があります。専門家に依頼した場合の費用を考慮しても、結果的に経済的損失が大きくなるケースは珍しくありません。

2.不利な条件で押し切られやすい

債権者との交渉では、法的知識に加えて、業界の慣行や相場、心理的な駆け引きも重要な要素となります。消費者金融やクレジット会社の担当者は交渉のプロであり、債権者側に有利な条件で合意を導こうとするのは当然のことです。

例えば、利息カットの交渉において、本来であれば将来利息の全額カットが可能なケースでも、「特別に利息を半分にしてあげる」といった表現で、部分的な減額にとどめられてしまうことがあります。債務者にとっては譲歩を得たように感じられますが、実際には相場より不利な条件である場合も少なくありません。

また、返済期間についても、債権者側はできるだけ短期間での返済を求める傾向にあります。個人が交渉する場合、「これ以上は無理です」と言われると、本当に限界だと信じてしまいやすいものです。しかし、専門家であれば債権者の真意を見極めながら、より長期間の分割返済を実現できるケースも多く見られます。

さらに、和解条件には専門的な文言や将来的なリスクが含まれていることもあり、それらを十分に理解しないまま合意してしまうと、後にトラブルへ発展する恐れがあります。一度成立した和解契約を覆すことは極めて困難であり、結果として長期間にわたり不利な条件に縛られることになります。

3.過払い金、時効援用、利息制限法などを見落としやすい

任意整理の交渉を行う前提として、債権者から提示された債務額が本当に正確なのかを精査する必要があります。特に、長期間にわたって返済を続けている案件では、過払い金が発生している可能性や、一部の債務について消滅時効が成立している可能性もあります。

過払い金が発生している可能性があるのは、主に2010年以前に借り入れをしていた人です。当時は利息制限法の上限を超える高金利で契約していたケースが多く、長期間返済を続けていた場合は、かなりの過払い金が戻ってくる可能性があります。

ただし、過払い金の有無を判断するには、取引履歴をすべて取り寄せたうえで、利息制限法に合わせて「引き直し計算」を行う必要があります。これは専門的な知識が求められるため、個人で正確に計算するのは非常に難しいのが実情です。

最後の返済から5年以上経過している借金については、消滅時効を主張できる可能性があります。時効援用は、条件さえ満たせば債務の支払い義務をゼロにできる非常に強力な制度です。しかし、正しい手続き方法や「時効が中断される条件」を理解していないと、そのチャンスを逃してしまいます。

また、利息制限法についても、単に上限金利を把握しているだけでは不十分です。
・遅延損害金の正しい計算方法
・返済額が利息と元本へどの順番で充当されるか
・複数の借入れがある場合の処理方法
など、細かい専門知識が求められます。知識が不足していると、本来は大幅に減額できた借金を、そのまま支払ってしまうリスクが生じます。

一部の債権者はあえて時効や過払い金の可能性に触れず、債務者に不利な条件で早期に和解を進めようとするケースもあります。専門家であればこうした駆け引きを見抜いて適切に対応できますが、個人で交渉する場合は気づかずに不利な条件を受け入れてしまうかもしれません。

4.平日日中の手続きで仕事への影響が大きい

任意整理の交渉は、基本的に債権者の営業時間内、つまり平日の日中に行われます。電話での交渉、書面のやり取り、場合によっては債権者のオフィスでの面談など、複数回にわたって平日の時間を確保する必要があります。

会社員の方の場合、この時間確保が大きな問題となるはずです。頻繁に有給休暇を取得したり、早退や遅刻を繰り返したりすることで、職場での立場や評価に影響が出る可能性があります。特に、借金問題を職場に知られたくない場合、休暇の理由を説明することも困難になります。

また、交渉期間中は債権者からの連絡に迅速に対応する必要があり、勤務中であっても重要な電話に出なければならない場面が生じます。これにより業務に集中できず、本業のパフォーマンスが低下するリスクもあります。

さらに、交渉が思うように進まず長期化した場合、精神的なストレスと時間的な制約が重なって、仕事への影響はさらに深刻になります。最悪の場合、収入源である仕事に支障をきたし、任意整理で決めた返済計画の履行が困難になるという本末転倒な結果を招く可能性も否定できません。

専門家に依頼した場合、こうした時間的な制約から解放され、本業に集中しながら安心して手続きを進めることができます。結果として、安定した収入を維持しながら確実な債務整理を実現できるため、長期的な視点では大きなメリットがあると言えるでしょう。

専門家への相談は、単なる費用ではなく、確実性と安心感を得るための投資として考えることが重要です。

弁護士・司法書士に依頼する4つのメリット

借金問題を専門家に依頼することで得られるメリットは、単なる手続きの代行を超えた価値があります。多くの方が「費用がかかる」「敷居が高い」と感じるかもしれませんが、実際に依頼された方からは「もっと早く相談すれば良かった」という声も数多くいただきます。専門家に依頼することで、精神的な負担が大幅に軽減され、より有利な条件で問題を解決できる可能性があります。ここでは、実際に依頼することで得られる具体的なメリットを4つご紹介します。

1.依頼後すぐに取り立てや督促が完全に止まる

弁護士や司法書士に債務整理を依頼すると、専門家が債権者に対して「受任通知」という書面を送付します。前述のとおり、この通知が債権者に届いた時点で、法律上、債権者は債務者本人への直接的な取り立てや督促を行うことができなくなります。

これは貸金業法第21条で定められた強制力のある規定であり、違反した業者には行政処分が下される可能性があります。つまり、毎日のように鳴っていた電話や郵便物による精神的な圧迫から、早ければ依頼したその日から解放されるということです。特に複数の債権者から督促を受けている場合、その効果は非常に大きいといえます。

2.交渉のプロが債権者と対等に条件交渉してくれる

個人で債権者と交渉する場合、どうしても立場が弱くなりがちです。債権者は交渉のプロであり、法的知識も豊富なため、不利な条件を提示されても適切に判断できないケースが多く見られます。

一方、弁護士や司法書士は債務整理の交渉の実績と経験が豊富で、各債権者の対応パターンや交渉の落としどころを熟知しています。例えば、同じ借入額であっても、交渉次第で利息のカット率や分割回数に大きな違いが生まれることがあるものです。

専門家が代理人として交渉することで、債権者も法的根拠に基づいた条件を提示せざるを得なくなり、結果として債務者により有利な条件で和解できる可能性が高くなります。また、交渉の過程で債権者が不当な要求をしてきた場合も、法的に適切な対応を取ることができるため、安心して任せられます。

3.過払い金や時効など有利な条件を見落とさない

借金問題の解決において、一般の方が見落としやすいのが「過払い金」や「消滅時効」といった、債務者にとって有利に働く可能性のある要素です。

過払い金は、以前の高い金利で返済を続けていた場合に発生する可能性があり、場合によっては借金が大幅に減額されたり、逆にお金が戻ってきたりすることもあります。また、最後の取引から5年以上経過している債務については、消滅時効が成立している可能性もあります。

専門家は依頼を受けると、まず取引履歴を詳細に調査し、これらの要素があるかどうか、徹底的にチェックします。一般の方では判断が困難な複雑な計算や法的判断も、専門知識に基づいて正確に行うことが可能で、こうした専門的な調査により、当初想定していたよりもはるかに有利な条件で解決できるケースは決して珍しくありません。

4.返済計画から家族対応まで総合的にサポートしてくれる

債務整理は単に借金を減らすだけでなく、その後の生活の再建も重要です。専門家は法的手続きだけでなく、依頼者の収入状況や家計を詳しく把握した上で、現実的で継続可能な返済計画を一緒に立ててくれます。

また、家族に内緒で手続きを進めたい場合の配慮や、逆に家族の協力が必要な場合の説明方法についても、豊富な経験に基づいたアドバイスをいたします。書類の管理や期日の管理なども専門家が行うため、依頼者は日常生活に集中できるはずです。

さらに、手続き後の生活についても相談に乗ってくれることが多く、返済の管理をはじめとして、クレジットカードが使えない期間の対処法や、将来的な住宅ローンの組み方など、長期的な視点でのサポートを受けられます。借金問題は解決後の生活設計も含めて考える必要があるため、こうした総合的なサポートは非常に心強いものです。

自分で任意整理をする際によくあるトラブル

債務整理の中でも比較的取り組みやすいとされる任意整理ですが、実際に自分で進めてみると想定外のトラブルに直面することがあります。前提としては、専門家に依頼することをおすすめしますが、トラブルが発生しても慌てないよう、事前に対処法を知っておきましょう。

自分で交渉したが断られた場合はどうする?

債権者との交渉で最も多いトラブルが「話し合いに応じてもらえない」「提案を一方的に拒否される」といったケースです。なぜこのような状況になるのでしょうか。

まず理解しておきたいのは、任意整理は法的な強制力を持たない「話し合い」であるということです。債権者には交渉に応じる義務はないため、個人からの申し出を断る権利があります。特に消費者金融やクレジット会社は、個人との交渉では「弁護士を立ててください」と回答することが少なくありません。これは、法的知識のない個人とのやり取りでトラブルが生じることを避けたいという企業側の判断によるものです。

このような場合の対処法としては、まず交渉のアプローチを見直すことが大切です。感情的にならず、客観的な資料を用意して、返済の意思があることを明確に示しましょう。収入証明書、家計収支表、返済計画書などの具体的な資料を準備し、「どうしても返済を続けたいが、現在の条件では困難な状況にある」ことを論理的に説明します。

それでも交渉が進まない場合は、一度弁護士や司法書士に相談することを検討してください。専門家が間に入ることで、債権者の対応が大きく変わることがあります。また、個人での交渉が困難と判断された場合は、個人再生や自己破産といった他の債務整理方法も視野に入れる必要が出てくるかもしれません。

和解後の返済でトラブルが起きた場合はどうする?

任意整理で合意に至っても、その後の返済過程で新たなトラブルが発生することがあります。最も多いのは「約束した返済ができない」「返済方法について認識の違いが生じる」といった問題です。

返済が滞った場合、多くの和解契約には「期限の利益喪失条項」が含まれています。これは、決められた期日に返済ができなかった場合、残りの借金が一括で請求されるという内容です。たとえば、月3万円の分割払いで合意していたのに、1回でも遅れると残額全てを一度に支払うよう求められる可能性があります。

このような事態を避けるために重要なのは、返済が困難になりそうだと感じた時点で、すぐに債権者に連絡を取ることです。事前に相談することで、一時的な返済猶予や再度の条件変更に応じてもらえる場合があります。黙って遅れるよりも、誠意を持って状況を説明し、解決策を提案する方が効果的です。

また、返済方法や金額について認識の違いが生じることもあります。「利息をカットすると言われたのに請求されている」「返済期間が約束と違う」といった問題です。こうしたトラブルを防ぐためには、合意内容を書面で残し、お互いが署名・押印した和解契約書を作成することが不可欠です。口約束だけでは、後でどちらの記憶が正しいかを証明することが困難になります。

専門家に委ねるべきタイミングとは?

自分で始めた任意整理を専門家に委ねるべき判断ポイントはいくつかあります。最も重要なのは「交渉が行き詰まった」「法的な問題が複雑になった」「精神的な負担が大きすぎる」といった状況です。

具体的なタイミングとしては、債権者から訴訟を起こされそうになった場合です。「支払督促」「少額訴訟」「通常訴訟」などの法的手続きに関する書面が届いた場合は、個人での対応は非常に困難になります。このような書類は法的な期限があり、適切に対応しなければ財産の差し押さえなどの強制執行に進む可能性があります。

また、複数の債権者がいる場合で、それぞれが異なる条件を提示してきた場合も専門家への相談を検討すべきでしょう。たとえば、A社は分割払いに応じるがB社は一括返済を要求する、C社は利息カットに応じるがD社は応じないといった状況では、全体的な返済計画を立てることが困難になります。

精神的な負担も重要な判断基準です。債権者からの連絡に恐怖を感じる、夜眠れない、日常生活に支障をきたすほどストレスを感じるようになった場合は、無理をせず専門家に相談することをお勧めします。債務整理は一時的なものですが、心身の健康は何よりも大切です。

自分で任意整理を進める際のポイント

任意整理を自分で進める際に最も重要なのが、すべてのやり取りを記録として残すことです。これは後々のトラブル防止だけでなく、交渉を有利に進めるためにも欠かせません。

まず、債権者との電話でのやり取りについては、通話の日時、担当者名、話し合った内容を詳細にメモしましょう。「◯月◯日◯時、△△会社の□□さんと通話。月3万円の分割払いを提案したところ、上司と相談して回答するとのこと。1週間後に再度連絡をもらう約束」といった具体的な記録を残します。可能であれば、通話後すぐに内容確認のメールを送り、お互いの認識を確認しておくとさらに確実です。

書面でのやり取りは必ずコピーを保管し、郵送の場合は内容証明郵便や特定記録郵便を利用して、いつ相手に届いたかを証明できるようにしておきましょう。メールでのやり取りも重要な証拠となるため、送受信記録をしっかりと保存します。

特に重要なのは、合意に関する記録です。「利息をカットする」「36回払いにする」「遅延損害金は免除する」といった約束事は、必ず書面で確認し、双方が署名・押印した和解契約書として残しましょう。この契約書がない場合、後で「そんな約束はしていない」と言われても反論することが困難になります。

また、自分の経済状況を示す資料も大切な記録です。収入証明書、家計収支表、他社からの借入状況などは、交渉の根拠として活用できるだけでなく、なぜその条件での返済を希望するのかを客観的に示す材料になります。

万が一、自分での解決が困難になった場合でも、これらの記録があれば専門家が状況を把握しやすく、スムーズに引き継ぐことが可能です。弁護士や司法書士に相談する際は、これまでのやり取りの経緯を正確に伝えることで、具体的なアドバイスを受けることができます。

まとめ

自分で任意整理を進める場合、債権者との交渉から合意書の作成、その後の返済管理まで、すべてを一人で責任を持って行わなければなりません。例えば、返済中に収入が減少したり、予期しない出費が発生したりした場合、債権者に再交渉を申し入れる必要が出てくるかもしれません。そのときにも、適切な法的知識を持って対応しなければなりません。

一方で、専門家に依頼した場合は、手続き完了後も相談窓口として活用できることが多いです。返済中に何か問題が生じたときでも、適切なアドバイスを受けられる安心感があります。また、万が一任意整理では解決できない状況になった場合、個人再生や自己破産といった他の債務整理手続きへの対応も可能です。

アヴァンス法務事務所は、借金問題解決の専門家として、全国から24時間、メールや電話でのご相談を無料で受付しております。借金問題は、時間が経過すればするほど、選択肢が狭まってしまいます。一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。完済までサポートいたします。

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