2025.11.28
任意整理
銀行カードのローンは任意整理(債務整理)できる?メリット・デメリットと注意点を解説

銀行ローンやカードローンの返済が難しくなると、「任意整理で解決できるのか?」という疑問を抱く方は多いでしょう。任意整理は、債権者と交渉して将来利息のカットや返済計画の見直しを行う手続きで、無理のない返済を目指せる債務整理の方法の一つです。ただし、銀行が相手の場合は独自の審査基準や対応方針があるため、消費者金融とは異なる注意点も存在します。
この記事では、銀行カードのローンが任意整理の対象となる理由と、手続きの流れ、注意すべきポイントについて解説します。返済に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
銀行ローンは任意整理できる?基本的な仕組みと条件

任意整理は、債権者と話し合いながら返済負担を軽減する手続きで、利息の減額や返済計画の変更を図ることができます。ただし、銀行は消費者金融とは異なり、審査体制が厳格で、任意整理に応じる条件も一定の基準があります。
ここでは、銀行ローンが任意整理の対象になる仕組みや、、銀行特有の注意点について解説します。
銀行ローンも任意整理の対象になる
銀行ローン(カードローン・フリーローンなど)は、任意整理の対象となる債務です。任意整理は、弁護士や司法書士が債権者と交渉し、将来利息のカットや返済期間の延長などによって返済負担を軽減する手続きであり、銀行も「債権者」の一つとして当然交渉の対象に含まれます。
実際には、メガバンク・地方銀行・ネット銀行など、ほとんどの銀行ローンで任意整理の実績があります。たとえば利息をカットして元金のみの返済にしたり、3〜5年程度の分割払いに組み直すことで、月々の返済額が大きく下がるケースもあります。
銀行が任意整理に応じる背景には、貸倒れを防ぎつつ元本をできるだけ回収したいという事情があります。債務者が自己破産すれば、銀行は元本の回収が難しくなるため、合理的な和解案であれば交渉の余地は十分にあります。ただし、任意整理は裁判所を通さない私的交渉であるため、銀行が必ず応じるわけではありません。返済能力、これまでの返済状況、延滞の有無などを総合的に判断し、応じるかどうかを決定します。
注意点として、銀行は消費者金融と比べて低金利で融資しているため、将来利息のカットに慎重な傾向があります。そのため、交渉には専門家の経験と戦略が重要となります。また、住宅ローンは任意整理の対象にはなるものの、自宅喪失のリスクが高いため、実務上は個人再生の「住宅ローン特則」を利用するケースが一般的です。
銀行ローンの返済が難しくなった場合、任意整理は有力な選択肢のひとつです。ただし成功率や条件は状況によって大きく異なるため、早い段階で専門家に相談し、最適な方法を検討することが大切です。
消費者金融ローンとの違いと注意点
銀行ローンと消費者金融ローンでは、任意整理の交渉姿勢や注意点に明確な違いがあります。まず大きな差として、銀行の方が任意整理に応じにくい傾向があることです。銀行は組織としての意思決定の過程が複雑で、本店決裁が必要となる案件も多く、交渉が長期化しやすい特徴があります。また、銀行は金利が低いため利息収入の余裕が小さく、将来利息や遅延損害金のカットに慎重な姿勢を見せる傾向があります。
一方、消費者金融は任意整理への対応が比較的柔軟です。高金利の商品が多いため、将来利息のカットや分割払いへの変更に応じてもらえることが多く、債務整理の実務経験も豊富です。また、2010年以前の借り入れについては、利息制限法を超える高金利での貸付が多かったため、過払い金が発生して返金されるケースもあります。ただし、銀行ローンでは金利が低いため、過払い金が生じる可能性はほとんどありません。
さらに銀行は、債務者との総合的な取引関係を重視する傾向があります。給与振込口座として利用している、住宅ローンを組んでいるなど、取引実績が良好な場合には、一定の柔軟な対応をしてもらえることもあります。
いずれの場合も、任意整理は「私的な交渉」であり、債権者が必ず応じる義務はありません。交渉の成否は、返済能力、支払いの意思、過去の返済状況、提出する返済計画の妥当性によって左右されます。
そのため、銀行・消費者金融どちらを相手にする場合でも、弁護士や司法書士など専門家による交渉を利用する方が、有利な条件で和解できる可能性が高くなります。
銀行ローンに保証会社がついている場合の注意点
銀行ローンには、原則として保証会社がついており、これは任意整理を行う際の重要なポイントです。保証会社とは、債務者が返済できなくなった場合に銀行へ代わって債務を支払う会社を指します。例えば、銀行カードローンではアコムやプロミスなどの消費者金融、または信販会社が保証会社となっているケースがよく見られます。
返済が滞ると、保証会社が銀行に対して「代位弁済」を行い、銀行の債権が保証会社に移ります。つまり、この時点で債権者は銀行から保証会社へと変わり、任意整理の交渉相手も保証会社になります。保証会社は債権回収を専門とするため、銀行よりも厳格な対応を取る傾向がありますが、一方で任意整理の交渉に慣れており、適切な返済計画を提示すれば柔軟に応じてもらえる場合もあります。
注意すべき点として、もし保証会社である消費者金融から直接の借入れもある場合、保証会社が複数の債権を持つことになります。たとえば、三井住友銀行カードローン(保証会社:プロミス)と、同時にプロミスから直接借入れをしているケースでは、代位弁済後、プロミスが両方の債権を保有します。この場合、一方の借入れだけを任意整理することは原則的にできず、両方をまとめて交渉する必要があります。
また、代位弁済が行われると、その事実は信用情報機関に「代位弁済情報(異動情報)」として登録され、ローンやクレジットカードの新規審査に影響を与えます。特に信用保証協会などの公的保証機関が保証会社となっている場合は、民間保証会社とは対応方針が異なる場合があります。
このように、銀行ローンを任意整理する際には、代位弁済のタイミングと保証会社の性質を正確に把握することが重要です。状況に応じた最適な対応を取るためにも、銀行ローンや保証会社への交渉経験が豊富な弁護士または司法書士に早めに相談することをおすすめします。
銀行ローンを任意整理する前に知っておくべき注意点

銀行ローンの任意整理を検討する際、多くの方が見落としがちなのが「銀行特有のリスク」です。消費者金融やクレジットカード会社とは異なり、銀行は預金口座、住宅ローン、給与振込など、私たちの生活基盤に深く関わっています。そのため、任意整理によって思わぬ影響を受ける可能性があります。
口座凍結のリスクと預金の事前対策
銀行ローンを任意整理する際に注意すべき重要なポイントの一つが、同じ銀行の預金口座が凍結される可能性があることです。任意整理の受任通知が銀行に届くと、銀行は預金と借入金を相殺できる権利(民法505条の「相殺権」)を有しているため、口座を一時的に利用停止にする対応がとられることがあります。
口座が凍結されると、預金の引き出し、振込の受け取り、自動引き落としなど、すべての取引ができなくなります。給与振込口座として利用している場合は、給与を受け取れなくなる可能性もあり、生活に大きな影響を及ぼします。
なお、「家族名義でも同一住所だから凍結される」という一般論は誤りであり、口座凍結はあくまで債務者本人名義の口座に限られます(ただし、名義貸しや実質的に本人が管理していると疑われる特殊なケースは別です)。
■ 事前対策
口座凍結のリスクを避けるためには、次のような対策が有効です。
・預金を事前に別の銀行口座へ移しておく
ただし、大量の資金を一度に移動させると不自然な取引とみなされるおそれがあるため、生活費の引き出しなど「自然な範囲」で段階的に行うことが大切です。
・給与振込先や公共料金引き落とし先を事前に変更する
凍結後に変更すると時間がかかるため、早めに切り替えておくと安心です。
・定期預金・積立は任意整理前に解約しておく
凍結されると解約手続きもできなくなります。
任意整理を依頼する際は、弁護士や司法書士に口座凍結のリスクについて必ず事前に相談してください。専門家によっては、受任通知の送付タイミングを調整し、預金の移動期間を確保するなど、実務的な配慮をしてくれる場合もあります。
住宅ローンで利用している銀行は避けるべき
住宅ローンの契約と同じ銀行で利用しているカードローンやフリーローンなどを任意整理の対象にするかどうかは、特に慎重な検討が必要です。住宅ローンそのものを任意整理の対象から外していても、同一銀行内の別の借入れを任意整理することで、住宅ローンに影響が及ぶ可能性があり、そのため自宅にも影響が出るためです。
多くの銀行は、顧客との取引全体を一体として管理しており、約款上「他の取引で延滞や債務整理があった場合には、住宅ローンについて期限の利益を喪失させることができる」といった条項(期限の利益喪失条項)を定めていることがあります。この条項が実際に適用されると、住宅ローンの残高を一括で返済するよう求められ、結果として自宅を手放さざるを得ないリスクが生じます。
また、住宅ローンの金利優遇が取り消されたり、条件変更や将来の借り換えの審査で不利に扱われたりする可能性も否定できません。特に変動金利で金利優遇を受けている場合には、優遇の取り消しがそのまま毎月の返済額増加につながり、家計への負担が大きくなるおそれがあります。
さらに、住宅ローンの保証会社と、同じ銀行のカードローンなどの保証会社が同じグループ会社である場合には、グループ内での情報共有を通じて、住宅ローンの条件見直しや将来の与信判断に影響を与える可能性もあります。
こうしたリスクを避けるため、住宅ローンを利用している銀行からの借入れは、原則として任意整理の対象から外し、他社借入れなど別の部分で調整を図る方法を優先的に検討するのが無難といえます。
約款の内容や実際の運用、銀行側の対応方針は金融機関ごと・事案ごとに異なりますので、「必ず住宅ローンが一括請求される」とまでは言い切れませんが、もし住宅ローン利用銀行からの借入れが任意整理の対象に含まれそうな場合には、住宅を守ることを最優先にした代替案(他社のみを任意整理する、返済計画を組み替える等)を検討することが重要です。
給与振込・公共料金引落への影響
任意整理で銀行口座が凍結されると、その銀行を給与振込口座や公共料金の引き落としに利用している場合、生活に直結する深刻な影響が出る可能性があります。口座が凍結されると、給与が振り込まれても引き出せず、電気・ガス・水道、携帯料金などの自動引き落としもすべて停止します。これにより、延滞扱いになったり、最悪の場合はサービスの停止につながることもあります。
こうした影響を避けるためには、任意整理の通知を送る前に以下の準備を進めておくことが重要です。
■ 給与振込の変更
勤務先へ早めに連絡し、振込先を別の銀行口座に変更してもらいましょう。債務整理を理由に伝える必要はなく、「メインバンクを変更したい」などの一般的な理由で問題ありません。変更には1〜2か月ほどかかることが多いため、早めの手続きが必要です。
■ 公共料金・通信費などの引落し口座の変更
電気・ガス・水道、携帯電話、インターネット、保険料などの引き落とし口座も事前に別の銀行へ切り替えましょう。手続きに時間がかかる場合があるため、完了までの間は コンビニ払いや振込用紙で支払う準備をしておくと安心です。
■ クレジットカードの引き落とし
任意整理の対象ではないカードでも、引き落としができないとカードが停止される可能性があります。そのため、クレジットカードの支払いも別口座へ変更しておきましょう。
任意整理の影響を最小限にするためには、給与・公共料金の口座変更を任意整理前に完了しておくことが不可欠です。準備が遅れると、生活インフラに支障が出かねないため、専門家に相談しながら早めに進めることをおすすめします。
銀行ローンを任意整理するときの手続きの流れ

任意整理は裁判所を通さず、弁護士や司法書士が銀行と直接交渉して返済条件を見直す手続きですが、銀行特有の審査基準や対応方針があるため、進め方には注意点があります。
弁護士・司法書士への依頼から和解まで
任意整理は、まず弁護士や司法書士といった専門家への相談からスタートします。相談時には、借入状況、収入、家計の状態、銀行ローンの契約書や返済履歴などを共有し、任意整理が適切な解決方法かどうかを判断します。同時に、どの程度の返済なら無理なく続けられるかを基に、現実的な返済計画を立てることが重要です。
専門家に正式に依頼すると、債権者である銀行へ受任通知が送付されます。この通知が届いた時点で、銀行からの督促や返済請求は一時的に停止し、以後の連絡はすべて専門家を通じて行われます。これは法律上認められた手続きで、債務者の精神的な負担を大きく軽減します。
続いて、専門家は銀行に対して取引履歴の開示請求を行い、債権調査に入ります。ここでは、借入残高、利息、遅延損害金などを正確に確認し、適用金利に誤りがないかをチェックします。銀行ローンは利息制限法の範囲内で貸し付けられることが多いため、過払い金が発生することはほぼありませんが、残債務額を正確に確定するうえで重要なステップです。
債務額が確定すると、いよいよ和解交渉に進みます。弁護士・司法書士が銀行と直接交渉し、
・将来利息のカット
・遅延損害金の減額
・3〜5年程度の分割払い(返済期間の延長)
といった条件変更を求めます。銀行ローンの場合、元本そのものを減額することは基本的に困難ですが、利息の免除や長期分割払いに応じてもらえる事例は多くあります。
こうして銀行との合意が成立すれば、和解書が作成され、新しい返済計画に基づく返済がスタートします。
保証会社との交渉に切り替わるタイミングとその理由
銀行ローンの任意整理では、手続きの途中で交渉相手が銀行から保証会社に変わることがあります。
多くの銀行ローンには保証会社が付いており、債務者が2〜3か月(おおむね60〜90日)滞納すると、保証会社が銀行に対して残債を一括返済する「代位弁済」が行われるためです。代位弁済が実行されると、銀行の債権は保証会社に移転し、その後の交渉相手は保証会社となります。
任意整理を保証会社への代位弁済が行われる前に開始すれば、交渉相手は銀行です。しかし、すでに代位弁済が完了している場合は、保証会社と交渉を進めることになります。保証会社は債権回収を専門とする会社のため、銀行より交渉が厳しくなる傾向がありますが、分割回数や和解条件について柔軟な対応をするケースも少なくありません。
この切り替わるタイミングを見極めることは、任意整理の成功に大きく影響します。滞納が始まった段階で早めに専門家へ相談することが重要です。
和解成立までの期間と返済条件
銀行ローンの任意整理における和解成立までの期間は、通常3〜6か月程度が目安です。ただし、債務額が大きい場合や複数の債権者が関与する場合、保証会社との交渉が難航すると、さらに時間を要することがあります。保証会社との交渉開始から和解成立までの期間はおおむね2〜4か月程度ですが、債務者の返済能力や保証会社の方針によって変動します。
和解成立後は、返済条件が確定し、返済計画に基づいて返済が開始されます。主な和解条件は以下の通りです。
・将来利息のカット
銀行ローンの利息は年利1〜15%程度であることが多く、これをゼロにすることで負担を大幅に軽減できます。保証会社も元本回収を優先するため、将来利息のカットを認める傾向があります。
・遅延損害金の減額または免除
遅延損害金についても全額免除または大幅な減額が求められます。
・分割回数・返済期間
一般的に36回(3年)から60回(5年)程度の分割が多いですが、債務者の収入や家計状況によってはさらに長期の返済も認められる場合があります。
・返済開始時期
和解成立から1〜2か月後に返済が始まることが多く、これは和解書作成や振込手続きの準備期間を見込んだ期間です。
・返済方法
基本は銀行振込ですが、債権者により口座引き落としが選択できることもあります。
返済計画は無理のない範囲で立てることが重要です。生活費を切り詰めすぎた計画では返済が滞り、再度債務整理が必要となるケースもあります。和解契約成立時には和解書が作成され、今後の返済方法や期日、遅延時の対応が明記されます。この内容に基づき、翌月から新しい条件で返済が開始されます。
銀行ローン任意整理のメリット・デメリット

銀行からの借入れに対する任意整理は、他の債権者との交渉と比べて独特の特徴を持っています。銀行は一般的に保守的な金融機関ですが、適切な手続きを踏めば柔軟な対応を示すケースも少なくありません。メリットとデメリットの両面を理解した上で判断することが重要です。
【メリット】利息のカットで返済の負担が大幅に軽減
任意整理の最大のメリットは、将来利息のカットによって返済負担を大幅に軽減できる点です。たとえば、300万円を年利12〜14%で借り入れている場合、通常の返済では総支払額が約400万円前後となり、利息だけで100万円近い負担が発生します。しかし、任意整理によって将来利息がカットされると、元本の300万円のみを3〜5年程度で分割返済する内容に再構成されるケースが多く、月々の返済額を大幅に減らすことが可能になります。
銀行ローンにおいては、保証会社が付いているケースが多いため、実際の交渉相手は保証会社となるのが一般的です。保証会社は任意整理の対応実績が豊富で、現実的な返済計画に応じて和解に至る例も少なくありません。地方銀行や信用金庫など、地域密着型の金融機関では、債務者の生活再建を目的とした柔軟な対応が見られることもあります。
交渉時には、債務者の収入や家計の状況を具体的に示すことが効果的です。銀行や保証会社も、貸倒れを避けて回収を確実にする観点から、無理のない返済計画であれば協議に応じる傾向にあります。さらに、任意整理手続き開始後は督促や取り立てが停止されるため、精神的負担の軽減にもつながります。
【デメリット】任意整理全般に共通するリスク
任意整理には返済負担を軽減できる大きなメリットがありますが、一方で避けられないデメリットも存在します。特に重要なのは、信用情報への事故登録(いわゆるブラックリスト入り)です。任意整理の和解が成立し借金の返済を完了すると、その事実は信用情報機関に記録され、記録期間は一般的に完済日から約5年間続きます。この期間中は新たなローンやクレジットカードの審査が非常に厳しくなり、携帯電話端末の分割購入ができない、家族カードの発行が困難になるなど、日常生活にも影響が及びます。
住宅ローンや自動車ローンの利用を将来検討する場合、この5年間の制約は大きな障害となることがあります。また、現在利用中のクレジットカードについても、途上与信(定期審査)で任意整理の事実が判明すると、利用停止や強制解約となる可能性があります。
銀行ローンを任意整理する際には、給与振込口座や公共料金の自動引き落としに同じ銀行の口座を使っている場合、受任通知が債権者に送付された段階で口座が一時的に凍結され、給与の受け取りや支払いに支障が出るリスクがあります。これを避けるため、事前に他行へ口座を変更するなどの準備が必要です。
さらに、銀行ローンに保証会社が付いている場合、代位弁済の後に交渉相手が保証会社に変わることが多いです。保証会社は銀行より交渉が厳しい場合もあり、提示される返済条件が必ずしも希望どおりになるとは限りません。
任意整理は裁判所を通さない私的な交渉であるため、債権者は交渉に応じる義務を負わず、借入額が少額であったり延滞期間が長期間に及ぶ場合は、交渉が難航したり応じてもらえない可能性もあります。
任意整理を検討するときは、これらのデメリットを十分に理解し、生活への影響を踏まえて専門家と相談しながら進めることが重要です。
他の債務整理方法との比較
任意整理だけが、借金問題の解決策ではありません。他の債務整理方法として、個人再生と自己破産があります。それぞれの特徴を理解して、ご自身の状況に最も適した方法を選択しましょう。
■ 任意整理
【特徴】
・専門家が銀行などの債権者と直接交渉する私的整理。
・将来利息のカットや返済期間の調整を目指す。
【メリット】
・将来利息がカットされ、返済負担を軽減できる。
・対象とする債権者を選べる。
・裁判所を通さないため、手続きが比較的簡単で早い。
【デメリット】
・信用情報に事故情報が約5年間登録される。
・元本の減額は基本的に難しい。
■ 個人再生
【特徴】
・裁判所を利用して借金を大幅に減額する法的整理。
・原則として借金は1/5程度まで圧縮されることが多い。
【メリット】
・元本そのものを大幅に減らせる。
・住宅ローン特則を利用すれば、自宅を手放さずに済む可能性がある。
【デメリット】
・安定した継続的収入が必要。
・手続きが複雑で時間がかかる。
・信用情報への影響も大きく、登録期間は長め。
■ 自己破産
【特徴】
裁判所に申し立て、借金の返済義務を全額免除してもらう手続き。
【メリット】
ほぼすべての借金が免除され、返済義務から解放される。
【デメリット】
・一定の財産を手放す必要がある。
・弁護士・司法書士、警備員、宅建業など一部職業に一定期間就業制限がある。
・信用情報への影響が最も大きい。
任意整理の大きな利点は、対象とする債権者を選択できることです。住宅ローンや自動車ローンは対象から外し、消費者金融やクレジットカードのみを整理するといった柔軟な対応が可能です。これにより、生活に必要な資産を維持しながら、返済負担を軽減できます。
費用面でも任意整理は比較的負担が少なく、弁護士費用は債権者1社あたり3-5万円程度が相場とされています。個人再生や自己破産と比べて手続きも簡素で、期間も3-6ヶ月程度と短いのが特徴です。
どの方法が最適かは、借入総額、収入状況、保有財産、家族構成などによって大きく異なります。アヴァンス法務事務所にご依頼される方の約8割が任意整理による債務整理を選択されます。まずはお早めにご相談いただきたいと思います。
任意整理後の銀行ローンへの影響
任意整理を行うと、信用情報機関に事故情報が登録され、一定期間銀行ローンの審査に通りにくくなります。しかし、この影響は永続的ではなく、時間の経過とともに状況は改善されていきます。任意整理後の銀行ローンへの影響について詳しく見ていきましょう。
ブラックリスト期間はどのくらい続く?
任意整理を行うと、信用情報機関に事故情報が登録され、いわゆる「ブラックリスト」に載った状態になります。この影響期間は一般的に約5年間ですが、どの信用情報機関に登録されるか、また登録の起点がどこかによって変動する点には注意が必要です。
まず、CIC(クレジット系)とJICC(消費者金融系)では、任意整理の和解成立日から5年間、事故情報が保有されます。一方、KSC(全国銀行個人信用情報センター)は「任意整理」という項目自体は保有しませんが、任意整理前に延滞していた場合、その延滞情報が延滞解消から最長5年間残る仕組みです。
ここで重要なのは、ブラックリスト期間の数え方です。
任意整理では、事故情報の登録が 「返済完了から5年間」 続くケースが一般的です。
たとえば、2024年に和解し、3年間の分割払いで2027年に完済した場合、信用情報が回復するのは最短でも2032年頃になります。つまり、任意整理開始からみると7〜8年間程度影響が続く計算です。
この期間中は、クレジットカード、カードローン、住宅ローン、自動車ローンなどの審査が非常に通りにくくなります。ただし、すべての金融機関が同じ基準で審査しているわけではなく、返済中でも独自の判断で融資を行う会社が一部存在することも事実です。現在の収入の安定性や返済履歴を総合的に評価する金融機関もあります。
信用情報がいつ回復するか不安な場合は、信用情報機関に対して情報開示請求を行うことで、保有されている情報を確認できます。自分の信用情報を定期的に把握しておくことは、将来のローン申込のタイミングを判断するうえでも非常に有効です。
任意整理した銀行では二度と借りられない?
「任意整理を行った銀行からは、再びお金を借りられるのか?」という疑問を持たれるかもしれません。結論から言うと、「絶対に借りられないわけではないが、難しくなる可能性が高い」というのが実務上の傾向です。
任意整理をした事実は、信用情報機関の事故情報として約5年間記録されますが、これは期間が過ぎれば削除されます。一方で、金融機関には「社内情報(社内ブラック)」と呼ばれる独自の顧客データベースがあり、任意整理の情報が長期間保管される場合があります。
この社内情報には法律による削除ルールがないため、記録が10年以上残る、場合によっては半永久的に残ることもあります。特にメガバンクなど大きな金融グループでは、グループ会社(カード会社・信販会社・消費者金融など)間で共有されるケースもあります。
こうした背景から、任意整理をした銀行での新規融資は、信用情報が回復した後でも厳しい審査となることが多いのが現実です。
しかし、「絶対に借りられない」わけではありません。
銀行によって審査基準は大きく異なるうえ、次のような事情があると、将来的に融資の可能性が出てくるケースもあります。
・任意整理後に他の金融機関で良好な返済実績を積んでいる
・年収が安定している、勤務先の信用が高い
・頭金を多く用意できる(住宅ローン等)
・任意整理後から十分な期間が経過している
・返済能力が客観的に評価できる
また、任意整理を行った銀行以外にも、国内には銀行・信用金庫・信用組合など数百の金融機関が存在します。1つの銀行に断られても、他の金融機関なら融資が通る可能性は十分にあります。今後も整理した銀行の普通預金口座を利用する場合は、口座管理を丁寧に行い、延滞などのトラブルを避けることで、関係改善につながるケースもあります。
任意整理後の借入はハードルが高くなるものの、「永遠に借りられない」というわけではありません。選択肢を広く持ち、現在の返済状況や信用を積み重ねることが重要です。
他の銀行なら借入できる可能性はある?
任意整理に関与していない他の銀行であれば、信用情報機関の事故情報(いわゆるブラックリスト)が削除された後、新規ローンの審査に通る可能性があります。
信用情報の保有期間は一般的に「完済から約5年」とされますが、審査では現在の収入状況、勤続年数、返済負担率(年収に対する年間返済額の割合、一般的な目安は25〜35%)などが重視されます。ただし、事故情報が消えていても、過去の債務整理歴が審査に不利に影響する可能性がある点には注意が必要です。
また、メガバンクよりも、地方銀行・信用金庫・信用組合のような地域金融機関のほうが、個別事情を丁寧に見てくれるケースがあり、審査が柔軟になる傾向が見られます。
■ 住宅ローンの場合のポイント
住宅ローンの中でも「フラット35(住宅金融支援機構)」は、民間銀行と比べて信用情報の扱いが相対的に柔軟で、
・自己資金が十分にある(借入比率が低い)
・返済負担率をクリアしている
といった条件を満たせば、事故情報が残っている期間でも審査に通る例があります。
ただし、一般的には事故情報が消えてから5年経過した後に申込みをした方が審査に通りやすく、頭金を多く用意する、配偶者の収入を合算する、連帯保証人をつけるなどの対策によって通過率が高まります。
■ 審査通過の可能性を高めるための取り組み
・信用情報の開示請求を行い、事故情報が削除されているか確認する
(CIC・JICC・KSCで確認可能。保有期間中に複数申込をすると“申込情報”が残り、不利になることがあります。)
・日常の支払いを遅延なく行い、現在の信用を積み上げる
(携帯料金・クレジットカード・公共料金の安定支払い、定期預金の積み立てなど)
・給与振込先や地域金融機関との取引実績を増やす
(地銀・信金との安定取引はプラス材料になることがあります。)
任意整理後の借入は個々の状況によって大きく異なります。
「いつ申し込むべきか」「どの金融機関が適切か」といった判断に迷う場合は、債務整理に詳しい弁護士・司法書士に相談し、最適なタイミングや戦略を立てることが成功の鍵になります。
まとめ

銀行カードローンの返済が厳しくなると、「任意整理で解決できるのか?」と不安に感じる方は多いでしょう。結論から言うと、銀行カードローンも任意整理(債務整理)の対象になります。任意整理は、弁護士や司法書士が銀行と直接交渉し、将来利息のカットや返済期間の延長を行うことで、月々の返済負担を軽減する手続きです。裁判所を通さないため、自己破産や個人再生に比べて手続きがシンプルで、家族や職場に知られにくいという特徴があります。
銀行カードローンも任意整理(債務整理)の対象になりますが、銀行カードローンには銀行特有の注意点があります。銀行は消費者金融よりも審査基準が厳しく、低金利で貸し付けているため、将来利息のカットに消極的なケースも見られます。また、保証会社が付いている場合は、銀行が代位弁済を行った後、交渉相手が保証会社に変わる点にも注意が必要です。保証会社は銀行よりも厳しい条件を提示することがあり、交渉には専門家の知識と経験が欠かせません。
アヴァンス法務事務所は、債務整理の専門家として土日・平日を問わず全国から24時間、電話やメールでのご相談を無料で受付しております。まずはお気軽にご相談ください。





