債務整理をすると住宅ローンはどうなる?家は残せる?

よくある誤解で、「債務整理=自己破産」と思っている方が多くいらっしゃいます。そのため、債務整理をすると自宅を失ってしまうのではないか、という漠然とした不安を抱えている方も多いようです。

結論から言いますと、自宅や住宅ローンに影響を出さずに債務整理をすることは可能です。

この記事では

「借金問題を解決したい」
「しかし自宅は残したい」
「債務整理をすると住宅ローンはどうなる?」

と考えている方のために、住宅ローンと債務整理の関係を解説します。

任意整理なら住宅ローンを除外して手続き可能

債務整理とは、借金を減額したり、支払いに猶予を持たせたりすることにより、借金問題を解決する方法です。債務整理には任意整理・個人再生・自己破産があります。この中でも、任意整理は自宅を残しやすい手続きです。

任意整理は、裁判所を通さずに金融会社に対して、利息の減免と分割返済について直接交渉し、返済の負担を軽減してもらう方法です。概ね、元金のみを3~5年程度で返済していくことになります。

この任意整理は、手続きをする債務としない債務を選ぶことができるため、住宅ローンを除外して手続きを行うことが可能です。この方法なら住宅ローンに影響を出さずに、借金問題を解決することが可能です。

住宅ローンを除外して任意整理をした場合の例

例えば、キャッシングやカードローンの借金が総額300万円(年利18%)あり、月々の返済額が10万円だったとします。これらの借金に加えて、住宅ローンの返済が月々8万円ある状態で任意整理をすると、どうなるのか見てみましょう。

まず、住宅ローン以外の総額300万円の借金に対して任意整理を行います。利息の免除と60回分割の条件で和解が成立した場合は、月々の返済額が5万円に減ります。

そして、住宅ローンは手続きから除外しているため、そのまま月々8万円の返済を続けます。任意整理なら、このような方法で住宅ローンに影響を出さずに、返済の負担を軽減することが可能です。

住宅ローンを除外して任意整理を行う場合の注意点

任意整理をして、返済の負担を軽減できたとしても、肝心の住宅ローンの返済が滞ってしまうと、住宅を差し押さえられてしまいます。そのため、任意整理後の返済と住宅ローンの返済の両方を継続できるかよく検討しましょう。

また、住宅ローンを組んでいる金融機関のカードローンやキャッシングを利用している場合は、その債務も任意整理の手続きから除外しなければなりません。住宅ローンと同じ債務として手続きが進んでしまうため、住宅ローンに影響が出てしまいます。

住宅ローンを残して借金問題を解決できた事例

個人再生の住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用する

任意整理で返済の負担を軽減しても、毎月の支払いが困難な場合は、個人再生を検討します。

個人再生は、裁判所に申立てを行い、債務を1/5もしくは100万円まで圧縮し、原則3年で分割返済していく方法です。これにより月々の返済額を大幅に減らすことが可能です。

しかし、個人再生は全ての債務が手続きの対象になります。つまり、住宅ローンにも影響が出るということです。

このまま、何もせずに手続きを進めた場合、住宅ローンも減額されますが、その代わりに住宅は銀行や保証会社によって競売にかけられ、処分されてしまいます。そこでポイントになるのが住宅資金特別条項(住宅ローン特則)です。

この特則を利用することで、住宅ローン以外の借金を減額し、住宅を手放さずに借金問題を解決することが可能です。

住宅ローンの残高と住宅の価値によって支払い額が異なります

住宅資金特別条項を利用して住宅ローンを残せたとしても、住宅ローンの残高、住宅の価値によっては個人再生後の返済額が増える可能性があります。

①住宅ローンの残高より住宅の時価評価額の方が低い

・借金の残高が総額500万円で毎月15万円ずつ返済(利率18%)
住宅ローンの残高が1,500万円で毎月8万円返済
・住宅の時価評価額が1,000万円

この場合は、総額500万円の借金が100万円に圧縮され、月々の返済額が約28,000円になります。そして、毎月8万円の住宅ローンの返済をそのまま継続します。(※他に資産がある場合は、返済額が上がる可能性があります。)

②住宅ローンの残高より住宅の時価評価額の方が高い

・借金の残高が総額500万円で毎月15万円ずつ返済(利率18%)
住宅ローンの残高が800万円で毎月8万円返済
・住宅の時価評価額が1,000万円

この場合は、住宅ローンの残高と住宅の時価評価額の差額の200万円が資産の扱いになります。そのため、単純に債務を1/5にするという訳にはいきません。個人再生には「清算価値保障原則」という原則があり、最低でも所有している財産と同じ金額を返済しなくてはいけないというルールがあります。

500万円の1/5である100万円と資産の200万円を比較して、高い方の金額である200万円を3年分割で返済しなくてはいけません。

そうすると、月々の返済額が約56,000円になります。そして、毎月8万円の住宅ローンの返済をそのまま継続します。(※他に資産がある場合は、返済額が上がる可能性があります。)

③住宅の時価評価額によっては返済額がそれほど減らない場合もある

・借金の残高が500万円で毎月15万円ずつ返済(利率18%)
住宅ローンの残高が500万円で毎月8万円返済
・住宅の時価評価額が1,000万円

住宅ローンの残高よりも、住宅の価値が大きく上回っている場合は、個人再生のメリットが小さくなります。住宅ローンの残高と住宅の時価評価額の差額の500万円が資産の扱いになります。

この場合は、清算価値保障原則により、500万円を返済しなくてはいけません。そうすると、月々の返済額が約139,000円になります。さらに毎月8万円の住宅ローンの返済をそのまま継続します。(※他に資産がある場合は、返済額が上がる可能性があります。)

もともとの借金が500万円で、個人再生後の返済額も500万円となると、個人再生のメリットが小さくなります。

住宅資金特別条項を利用する場合の注意点

個人再生によって住宅ローンを残せたとしても、その後の住宅ローンの返済が滞ってしまうと、住宅を差し押さえられてしまいます。そのため、個人再生後の返済と住宅ローンの返済の両方を継続できるかよく検討しましょう。

また、住宅資金特別条項を利用するには条件があります。さらに、先述のように住宅ローンの残高と住宅の時価評価額によっては手続き後の返済額が上がる可能性もあるため、認定司法書士・弁護士と事前に方針をよく検討しましょう。

自己破産の場合は住宅を残すことが難しい

個人再生でも借金問題を解決できない場合は自己破産を検討することになります。

自己破産は、裁判所に申立てを行い、認可を受けられれば、すべての借金の返済義務が免除される方法です。しかし、家・不動産・車・バイクなどの20万円以上の価値のある財産は、基本的に裁判所が売却してお金に換え、債権者に分配します。

そのため、自己破産の場合は住宅ローンの有無にかかわらず、住宅を残すことが難しいです。

住宅ローンのない住宅の場合

住宅ローンがない状態で債務整理を行った場合は、次のようになります。

・任意整理を行う場合
ローンのない住宅に特に影響はありません。

・個人再生を行う場合
住宅を処分されることはありませんが、個人再生後の返済額が増える可能性があります。

・自己破産を行う場合
差押えの対象になりますので、住宅を残すことは難しいです。

また、債務整理をせずに借金問題を放置した結果、債権者によって訴訟を起こされ、ローンの有無にかかわらず、住宅を差し押さえられる可能性もありますので、すでに返済が苦しくなっているなら、早めに解決を図りましょう。

ご家族の住宅や住宅ローンに影響は出ない

債務整理によって住宅に影響が出るのは、ご本人名義のものだけです。ご家族が組んでいる住宅ローンに影響が出たり、ご家族が住宅ローンを組めなくなる、ということはありません。ただし、債務整理をしたご本人が保証人になることは難しい可能性が高いです。

また、ご家族名義の住宅が差し押さえられることもありません。

今後、住宅ローンを組もうと考えている場合

任意整理、個人再生、自己破産のどの方法を選択しても信用情報機関に事故情報が登録されます(俗に言うブラックリスト)。そのため、一定期間(10年程度)は住宅ローンを組むことが難しくなります

「住宅ローンを組みたいから債務整理をしない」と考える方もいるかもしれません。しかし、債務整理を検討しているということは、すでに返済が苦しくなっているはずです。借金がある状態で住宅ローンの審査に通るかどうかも分かりません。

もし、住宅ローンの審査に通ったとしても、今の借金に加えて住宅ローンの返済が増えます。まずは債務整理をして、借金問題を解決してから住宅ローンを検討される方が近道かと思われます。

債務整理と住宅ローンのまとめ

このコラムでは債務整理と住宅ローンについて解説しました。

任意整理・・・住宅ローンを除外して手続きを進めることが可能。
個人再生・・・住宅資金特別条項を利用して住宅ローンを残すことが可能。ただし、住宅ローン残高と住宅の価値によって、手続き後の返済額が上がる可能性がある。
自己破産・・・住宅を残すことが難しい。

アヴァンス法務事務所では、お客様のご事情に合わせて、柔軟な対応を心がけております。また、お客様ご自身で解決方法を選択することは困難です。任意整理や個人再生、自己破産にもそれぞれ条件やメリット・デメリットがあります。

借金の返済でお困りであれば、まずは当事務所にご相談ください。お客様に合った解決プランをご提案いたします。

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