2022.12.21
借金のお悩み
差し押さえはどんな順番で進む?家族の財産は?回避はできない?
借金の返済ができないと、財産を差し押さえられるのではないかと、不安に思っている方も多いのではないでしょうか。
突然、怖い人が家に来て、家中のものに赤紙をぺたぺたと貼っていくのでは…。このような想像をしていませんか?
しかし、実際はこのようなことはありません。差し押さえにも順番があります。このコラムでは差し押さえが進む順番、差し押さえられるもの、どうやって回避すればいいのかを解説します。
差し押さえには順番がある
差し押さえはある日、突然、行われるわけではありません。借金の返済が滞ってから、差し押さえに至るまでには段階があります。
概ね下記の流れで差し押さえが進んでいきます。
・返済が滞る
・電話や書面による督促
・一括請求をされる
・裁判所から督促や訴状が届く
・差し押さえの判決が取られる
・差し押さえ
このように、段階を経て進んでいきます。返済が滞ったらすぐに差押えになる、と言うわけではありません。しかし、すぐに差押えにならないからと言って、借金問題を放っておいてはいけません。
できれば、最初に返済が滞った段階で解決を図った方が得策です。しかし、どうしていいか分からないまま、時間だけが過ぎてしまい、差し押さえに発展してしまう方もいらっしゃいます。
では、どんなものが差し押さえられるのか、次の項目で解説します。
どんなものを差し押さえられるのか
差し押さえの対象になるのは、主に下記の財産です。
・給料
・預貯金
・不動産(土地、建物)
・車、バイク
・現金、有価証券、生命保険の解約返戻金
など
差し押さえの対象になるのはご本人名義の財産のみです。ご家族の財産まで差し押さえられることはありません。
差し押さえられる可能性が高い[給料]
一般的に、差し押さえられやすいのが給料です。そして、差し押さえは滞納している借金を完済するまで続きます。
ただし、給料の全額を差し押さえられるわけではありません。給料は生活を維持するための、必要最低限の財産ですので、差し押さえの範囲が限定されています。
給料の差し押さえの範囲は、原則として、下記のように定められています。
①手取り額が44万円未満なら、その1/4の金額が差し押さえの対象
②手取り額が44万円以上なら、33万円を差し引いた金額が差し押さえの対象
例えば、手取りの月給が20万円の人は1/4にあたる金額の5万円が差し押さえの対象になります。もし、手取りの月給が50万円の人であれば、33万円を差し引いた金額の17万円が差し押さえの対象になります。
さらに、給料の差し押さえは勤務先に通知が行きます。勤務先が差し押さえ相当額を毎月計算し、ご本人の給料とは別に債権者に振り込みをしなくてはいけないため、勤務先に負担がかかってしまいます。
差し押さえられる可能性が高い[預貯金]
給与の他に差し押さえられやすいのが預貯金です。預貯金口座にある残高の内、債権相当額が強制的に回収されます。
もしも、1度の差し押さえで借金の全額を回収できなかった場合は、何度も差し押さえられる可能性があります。預貯金を回収された後は、元通り口座を利用することができます。
その他、差し押さえられるもの
車やバイク、住宅、土地、有価証券、生命保険の解約返戻金など、換金性のある財産が差し押さえの対象になります。
差し押さえが禁止されている財産
債務者が生活を維持するうえで、必要不可欠な財産は、差し押さえが禁止されています。主に下記の財産が該当します。
・生活に必要な家具や衣類
・仕事に必要な道具類
・年金
・生活保護給付金
・児童保護手当
・ご家族名義の財産
など
年金は受け取る人の最低限の生活を保障するためのお金です。そのため、差し押さえが禁止されています。ただし、年金が銀行口座に振り込まれた後は「預貯金」の扱いになるため、預貯金として差し押さえられる可能性がありますので、注意が必要です。
生活保護給付金や児童手当も同様に、銀行に振り込まれた後は預貯金とみなされ差し押さえの対象になります。
差し押さえを回避する方法
差し押さえを回避するには、裁判所の判決が確定する前に、借金問題を解決する必要があります。
①借金問題を早めの段階で解決する
先述したように、差し押さえはある日、突然行われるわけではありません。
差し押さえをされるまでの間に、何度も督促の電話がかかっているはずですし、書面も送られてきているはずです。他にも、一括請求の通知や差押予告通知書が送られてくるなど、段階を踏んで進んでいきます。
差し押さえに発展する前に、収入を増やす、支出を減らす、身内の方に援助を依頼するなどの方法で早めに対処しましょう。
②債務整理の手続きを行う
早めに借金問題を解決したくても、打てる手立てがないなら、債務整理の手続きを検討してみましょう。
債務整理とは、借金を減額したり、支払いに猶予を持たせることで、借金問題を解決する手続きです。債務整理には「任意整理」「個人再生」「自己破産」があり、それぞれ特徴があります。
任意整理
金融会社と直接、利息の減免・支払い回数等を交渉し、返済の負担を軽減する方法です。
個人再生
裁判所に申し立てを行い、住宅ローンを残して債務を大幅に圧縮できる方法です。
自己破産
裁判所に申し立てを行い、すべての支払い義務を免除してもらう方法です。
裁判所から通知が来ているなら早急に対応しなくてはいけない
もし、すでに裁判所から訴状や督促状などの通知が来ているなら、すぐに適切な対応をしなくてはいけません。これは差し押え寸前の状態にあると思ってください。
裁判所が定める期日までに対応しなくてはいけない
裁判所から届いた支払督促状は2週間以内に異議申立書を送らないと、本人不在のまま裁判が進んでしまい、差し押さえの判決が出てしまいます。
他にも、訴状や答弁書催告状、口頭弁論期日呼出状といった通知が送られてくることもあり、いずれにしても裁判所が定める期日までに、答弁書を提出するなどの対応が必要です。
もしも、これらの対応をせずに放置してしまうと、本人欠席のまま裁判が進んでしまい、差し押さえの判決が取られてしまいます。
解決の難易度が上がってしまう
適切な対応ができずに、差し押さえの判決が確定してしまうと、借金問題の解決の難易度が増してしまいます。判決が確定してからでも、債務整理を行うことは可能ですが、選択肢が限られてきます。
先程、債務整理には「任意整理」「個人再生」「自己破産」がある、とお伝えしました。この中の任意整理は裁判所を通さずに、金融会社と直接、交渉を行うため、柔軟な対応ができる上、他の2つの方法に比べて手続きが簡単です。
任意整理であれば、ご家族にも内緒で手続きを進められますし、車や住宅などの財産を残すことも可能です。しかし、裁判所を通さない任意での交渉になるため、差し押さえを解除することはできません。
差し押さえを解除するには、個人再生か自己破産しかありません。この2つの方法は裁判所を通して手続きを進めるため、手続きが複雑です。また、同居のご家族に内緒で手続きを進めることが難しく、車や住宅などの財産を手放す可能性も出てきます。
このように解決の難易度が上がってしまうため、裁判所の判決が確定する前に解決を図りましょう。さらに言うならば、「返済が苦しい」「延滞を出してしまった」など、もっと早いタイミングで解決されるのが望ましいです。
まとめ
借金の返済が滞っても、突然、差し押さえをされるわけではありません。差し押さえをされるまでに、何度も督促の連絡が入っているでしょうし、一括請求や裁判所からの通知が来るなど、段階を踏んで進んでいきます。
しかし、そのまま何もせずに放置してしまうと、差し押さえまで進んでしまいます。給与や預貯金を差し押さえられると、生活がさらに困窮してしまい、借金問題が深刻化してしまいます。
ここまでの状況になる前に、借金問題の根本的な解決を図りましょう。アヴァンス法務事務所は設立以来15年、債務整理を専門としてきました。借金問題がどうにもならないなら、お気軽にご相談下さい。